広島東洋カープの摩訶不思議「二宮清純のスポーツ一刀両断」

| 日刊大衆

 世の中には、よくよく考えてみると不思議なことがたくさんある。だが、不思議なことでも慣れてしまうと不思議ではなくなってしまう。これもまた不思議だ。

 さて、これなど、その典型的な例ではないだろうか。リーグ3連覇を果たした広島の正式名称は「広島東洋カープ」である。「東洋」はかつての親会社「東洋工業」の名称だ。しかし、今、広島に「東洋工業」なる自動車メーカーは存在しない。「それなのに、なぜ広島東洋カープなのか教えて欲しい」。旧知の経済記者から、こんな質問を受けた。

 周知のように「東洋工業」は1984年に自動車のブランド名に統一するかたちで「マツダ株式会社」と改称している。ならば「広島マツダカープ」と名乗るべきだろう。だが、ここにも厄介な問題が存在する。球団の株式はオーナー一族である松田家が関連会社も含めて61.2%も保有しており、マツダに経営権はない。またマツダは球団を「持分法を適用しない非連結子会社」と位置付けており、球団とは一線を画している。

 そうであるなら、なおのこと「広島東洋カープ」と名乗る意味がわからない。昔に戻って「広島カープ」でいいのではないか。ネーミングライツ? いや、それなら「東洋」ではなく「マツダ」だろう。存在しない会社を球団名に冠したところで何のメリットもない。何だか亡霊が生き続けているような話である。

 不思議なことは他にもある。プロ野球協約では「12球団の運営会社及び役職」の記載が義務付けられている。たとえば「読売ジャイアンツ」のオーナー企業が「読売新聞グループ本社」であるのに対し、「広島東洋カープ」のオーナー企業は「松田家」と記載されている。「家」が「企業」というのも理解に苦しむ。

 このように広島球団には摩訶不思議な話がたくさんある。件の経済記者が疑問を抱いたのも、広島が急激に強くなったからだろう。まぁどんな話題であれ、注目されるのはいいことだ。

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