「朝起きて外を見たら、周りは警察官と車だらけでびっくりしたんですよ。何が起きたのか、まったく分かりませんでした。友達から電話が掛かってきて、『目の前の家で人が殺されたみたいだ』って言うんです。まさかって思いましたね」
そう話すのは、福島県須賀川市小作田の新興住宅地に暮らす女性である。警察がものものしく一軒の民家を取り囲んでいたのは、1995年7月5日午前7時頃。現場となった家は、新興住宅地の中でもひと際目立つ、瀟洒な家だった。
福島県警の捜査員たちがその家の中へと踏み込むと、異様な臭いがすぐに鼻についたという。その臭いは、一階奥の八畳間から漂ってきた。足元には、蛆虫が一面に這っている状況で、経験豊かな捜査員たちには、その先に何があるか、すぐに察しがついた。恐る恐る部屋に足を運んだ彼らの目に飛び込んできたのは、想像を上回る凄惨な光景だった。八畳間には、腐敗した男女6人の遺体が、布団から頭だけを出した状態で、仰向けに並べられていたのだった。遺体が発見されたのは、梅雨の時期である。それゆえ、一部の遺体はすでにミイラ化していたそうだ。前出の女性が語る。
「現場に入った捜査員が話してくれました。『嗅いだことのないような臭いで、ものすごい蛆虫の数だったから、その後しばらくお米を食べられなかった』って…」
遺体が見つかった家の主は、祈祷師の江藤幸子(当時47歳)。発見された6人は、彼女のお祓いを受けるためにこの家で生活していた信者たちだった。江藤は「悪魔祓いをする」と言って、同居していた他の信者たちを太鼓のバチなどで叩き、6人を殺害していた。
この家には10人以上の信者が暮らしていたという。中には一家で移り住んだ者もいて、夫が妻の殺害に加担したり、子どもたちが死んだ両親の傍で暮らすなど、異様な状況下で事件は起きた。
事件の発生した95年は、オウム真理教の麻原彰晃が逮捕された年でもある。世間を震撼させたオウム事件の影に隠れてしまった江藤の犯行ではあったが、両者は「宗教者による犯罪」という点において、共通していた。
(明日に続く)
福島県須賀川市「悪魔祓い事件」の実態①
2019.01.11 06:00
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