ルールがある以上、多少の返り血を浴びるのは致し方あるまい。FAで獲得した丸佳浩の人的補償として、広島が巨人・長野久義を指名した。
長野といえば2018年こそ規定打席数に達しなかったが、年俸2億2000万円(19年)のバリバリのレギュラーである。プロ入り2年目の11年には首位打者、12年には最多安打のタイトルを獲得している。ホームランも入団以来9年連続で2ケタをマークしている。2年連続MVPの丸佳浩と比べれば見劣りするが、まだ2、3年はレギュラーを張れる実力の持ち主である。広島の松田元オーナーが「4連覇、日本一を考えたときに、育成で間に合っていない部分を現実的に考えた」と語っているように、手堅い補強を行ったように思える。
周知のようにFA制度は1993年オフにスタートした。第一号は阪神から福岡ダイエーに移籍した松永浩美だ。当初は権利を行使して移籍した選手に対して、獲得球団が元の所属球団に補償(金銭もしくは人的+金銭)義務が生じるという設計だったが、2008年からは旧年俸ランクA(外国人選手を除きチーム内1〜3位)、ランクB(同4位〜10位)の選手をFAで獲得した場合に限り、金銭もしくは選手1名+金銭の補償義務が発生する、というたてつけに改められた。Aランクと見られる丸を獲得すると決めた時点で、巨人はある程度の出血は避けられなかったのである。
このようにFA移籍に関する人的補償には、小なりと言えども、「戦力均衡」の意図が込められている。すなわち、補償要員の活躍いかんによっては、ダメージを軽減することができるのである。フロントの眼力が問われるのは言うまでもない。
さらに言えば、広島には長野にプラスして1億500万円もの補償金がついてくる。これはレギュラーひとり分の年俸だ。長野が丸と同等の活躍をすれば、どちらが“勝ち組”かわからなくなってしまう。ストーブリーグの収支が明らかになるのは少なくとも2、3年後である。