北朝鮮要人の治療には、90年代からフランスの医師が関わっていたことはよく知られている。始まりは90年代初頭、故・金正日総書記の妻であった高英姫(コ・ヨンヒ)氏のがん治療だった。高夫人は2004年に極秘でパリのキュリー研究所に運び込まれ死亡したとされる。
「91年には、故・金日成主席の心臓疾患の治療依頼を受けた、仏中部リヨンの医師たちによって執刀が行われています。医療チームは平壌に入り、ペースメーカーを埋め込む手術を行ったのです」(北朝鮮ウオッチャー)
その数年後には、正日総書記が落馬して頭を打ち、現地の医師に脳出血と診断された。このときはパリの医師に声が掛かったが、「偉大な科学者が病気だ」という説明しかなく、平壌で見せられたのはCTスキャンの画像ばかり。「手術は不要」と診断すると家族は満足せず、別の医師をリヨンから呼び寄せたが診断は同じだったという。
こんなバカバカしい逸話がゴロゴロしているのが北の医療状況だ。
「受診のためにフランスを訪れる要人も多く、渡仏ビザ取得に必要な招待状を北朝鮮の外交官から定期的に頼まれることも多かったようです。仏内務省はこうした北要人の行動を把握するために、調査チームを配置したくらいで、対象人物の中には、暗殺された金正男氏もおり、彼は自身の心臓病治療のためにたびたび渡仏していていました」(国際ジャーナリスト)
この状態だから北朝鮮では医者が不足しているし、そもそもエリートは医者になりたがらない。
「日本や中国では『親戚に医者がいる』と言えば誰もがうらやましがります。これは両国に限らず、世界中どこの国でも例外なく、医者の地位は高いものですが、北朝鮮は違います。脱北者によれば、学校の先生に賄賂を渡せば成績がどうにでもなるように、医者にも賄賂を渡さなければ治療してもらえません。だから尊敬されないし、そもそもドルを稼げる“商売”ではありませんから魅力がないのです」(前出のウオッチャー)
北朝鮮の為替相場を見ればすぐに分かるが、「ぱっとしない収入」を外貨で得る方が、「まずまずの給料」を北朝鮮ウォンでもらうよりもはるかに価値がある。こうした前近代的な経済構造が是正されない限り、北朝鮮に援助をしても”焼け石に水”になりかねない。
北朝鮮は世界で唯一「医者が尊敬されない」国
2019.02.07 22:00
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