「殺人あおり運転」からこうして身を守れ(3)とにかく相手にしないこと

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「殺人あおり運転」からこうして身を守れ(3)とにかく相手にしないこと

 手始めに、あおり運転常習者の心理的なメカニズムを理解しておくことが重要だという。

 精神科医の片田珠美氏が話す。

「東名高速道路でのあおり運転事故で危険運転致死傷罪などに問われた石橋和歩被告は、まさにその典型です。あおり運転をすることで『自分はこんなにすごいんだ』と、自己顕示欲や承認欲求を満たしているように見受けられます。また、精神医学では『間欠爆発症』と診断されるのですが、怒りや攻撃衝動をコントロールできない衝動制御障害の一種です。たまにハンドルを握るとやけに強気になる人がいますが、車の運転中は匿名性や安心感を得られていると勘違いし、拍車がかかりやすいのです」

 つまりは、不運にも遭遇してしまった場合、相手の土俵に乗らず、自身は冷静でいることが求められるのだ。

 警視庁は「あおり運転」による甚大な被害を回避するため、ドライバーに向けて、こう啓蒙している。

〈危険な運転者に追われるなどした場合は、サービスエリアやパーキングエリア等、交通事故に遭わない場所に避難して、ためらうことなく警察に110番通報をしてください〉

 片田氏が補足する。

決してやり返そうとは思わないことです。火に油を注ぐだけ。さらに危険運転をエスカレートさせ、あなたに危害を加えようとしてくるはずです。衝動コントロールができない人というのは、治らないんですよ。そういう人には何を言ってもムダなので、とにかく相手にしないこと。逃げるが勝ちだということを覚えておいてください。そして、すみやかに安全な場所に移動することです」

 この対応の効果を裏付けるように、先のあおり運転常習者も吐露する。

「ここだけの話だけど、相手が車から降りて来ないとスマホもドラレコも壊せないからな。逃げられちまうと、証拠隠滅ができなくなる。追い詰めたとしても、ドアを閉められてポリに通報されるのが、いちばんやっかいなんだ」

 警察はあおり運転の取締りを強化しているが、その一方で法制度が追いついていないのが実情だという。高橋氏が指摘する。

「あおり運転のみで、追突などしていない場合は、暴行罪を適用するのが警察庁の通例であるようです。暴行罪は『2年以下の懲役、または30万円以下の罰金』なので、決して重いものではありません。現行法では酒気帯び運転や酒酔い運転が懲役3~5年ですから、その程度の刑罰はあってもいいと思います。そもそも車で接近する行為が暴行に当たるのかという矛盾はあります。だからこそ、道路交通法の中に新たに『あおり運転罪』を創設し、罰則強化を図るべきだと考えます

 あおり運転撲滅にはまだまだ課題が山積みである。

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