年齢差がある孫のような息子に祖父の話をしてあげたくて軍歴照会をした

| 心に残る家族葬
年齢差がある孫のような息子に祖父の話をしてあげたくて軍歴照会をした

亡くなって十年以上経ったが、父のことは良く判らないままだ。子供が嫌いな人で、一緒にどこかに行くとか遊ぶことがほとんどなかった。存命中に聞けることはたくさんあったが、私は父の過去に関心が薄かったせいで今頃になって後悔している。昨年父の「軍歴照会」をした。父の陸軍時代の足跡が辿れるのならと手に入れた。A4三枚に所属部隊名や移動の記録がほとんどで,独り満州の地図を見ながら父に思いを馳せた。


■晩年に自らのルーツ、クンタ・キンテを探した父

米国ドラマ「ルーツ」を覚えているだろうか。1977年に日本でも放送され高い視聴率を記録した。アフリカ系アメリカ人の作者が書いたノンフィクション小説がドラマ化されたのだ。父が退職したのは、このドラマが放映された数年後だったはず。実家を離れて都会暮らしを始めていた私は、自分の生活に追われ定年後の父が何をしていたのか関心が無かった。年に一度は帰郷していたが、父が何をしているのか尋ねたこともなかったように記憶している。父が、生まれ故郷の寺を何度となく訪れて、先祖のことを調べているという母の話に当時の私が食いつくことは無かった。

父の実家は既に無く、身内は離散して誰も残っていないことは聞いていた。父が何を思って菩提寺に通って調べていたのか最後まで父自らの説明は無かった。江戸時代の終り頃までたどれたようだが、その先は資料が焼失していて分らなかったそうだ。クンタキンテは見つからなかった。

■親を知らぬ子

父は、先祖を知りたいと素朴に思ったに違いない。私もその頃の父と同じような年齢になり、同じような思いを抱いている。そして私は、息子に祖父母のことを伝えたいと思った。父は息子の誕生前に逝き、母は私を息子と認識できない状態でベッドにいた。私の息子には私の祖父母の記憶が無い。私が話してあげようと思っても私は両親のことを何も知らない。父の軍隊時代の断片を知ることが出来たが、若い頃に胃の手術したと聞いていたが、それが軍隊時代であったことを確認できただけだった。

母が亡くなった時に、母の原戸籍で再婚だったことを知りとても衝撃を受けた。私は両親の過去を知らなさ過ぎることを未だに後悔している。両親がどんな人生を過ごしていたのか知りたいと思っても術はない。

今頃思い立っても父の兄弟も逝き、残っている母の弟妹も遠方に居て高齢だ。両親を知る人が都合よくその辺に居るでもない。親が逝ってからでは何ともし難いことだ。

■父が遺さなかったこと 私が遺したいこと

年齢差があって孫のような息子がいる。息子が成人し親離れして飛び立つ日まで、親との思い出をたくさん残してやりたい。両親との記憶が希薄なことが私の心残りだから、息子に同じ思いをさせたくない。両親がどんな人で、それぞれがどんな人生を歩んだか知っていて欲しい。将来孫に話してやって欲しい。将来息子が親探しに過去を彷徨するような終活をしないようにしてあげるのが私の役目だと思っている。

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