遠藤ミチロウ死去:ロマン優光連載134

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遠藤ミチロウ死去:ロマン優光連載134

ロマン優光のさよなら、くまさん

連載第134回 遠藤ミチロウ死去

 中学三年の時に地元のレンタルビデオ屋(TSUTAYAのニセ物みたいなやつ)で『STOP JAP』と『虫』が二枚組で収録されている徳間からの編集盤CDを借りてきて聴いたのが最初だった。それは同時に日本のパンクバンドをそれと意識して自発的に音源を聴いた最初でもあった。
『虫』の虫という曲を聴いて「ディスオーダーとPILを足したみたいだな」と思ったのを思い出す。なんだか気が利いた発言のようだが、当時の自分はミニマルで長い曲はPILの『メタルボックス』ぐらいでしか聴いたことがなく、ハードコアパンクでちゃんと聴いたことがあるのが、その頃はディスオーダーとGBHだけだったというだけの話。今まで聴いた音楽の中で一番うるさかったのがディスオーダーで、単にギターがノイジーなものを例える語彙がそれしかなかっただけなのだ。
 イギリスのバンドを中心にパンクやNWのバンドを聴いていた自分にとって日本のバンド、ラジオで聴けるような規模の活動をしているようなバンドの楽曲と言うのは、バックの音はともかく歌詞や歌メロが耐えられないと感じることが多かった。今思うと気取ったガキだったのだ。だから、レンタルで安く聴けるからくらいの気持ちで正直あまり期待せずに聴いた。
 衝撃を受けた。サウンドはもちろん。歌詞に、歌い方に。 日本のバンドに感じてた違和感がまったくなかった。全てがかっこよかった。歌詞がわかる分、洋楽よりもインパクトが強かった。海外のバンドに匹敵するというより、海外のバンドより凄いと思った。あの時の衝撃は忘れられない。そこから日本のバンドを積極的に聴いてみようという気持ちが生まれ、INUやあぶらだこをレンタルしてきたり、自主製作盤に手をのばすようになった。あの日、ザ・スターリンを聴いてなければ、自分の音楽嗜好はまったく違ったものになっていただろう。
 粉川哲夫氏によって期末試験として行われたビデオ・スターリンのライブの話を知って、和光大学に進学しようとしたら、親と教師にもう少し上の大学を受験しろとめちゃくちゃ怒られたこともあった。
 進学のために上京した後、阿佐ヶ谷で遠藤さんを目撃して「あ、ミチロウだ!」と口に出してしまった。

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