今日、お茶(茶道)やお花(華道)と言えば女性が多く活躍しているイメージですが、男性でも端正に着こなした和装で茶を点て、花を活ける姿はなかなかに趣深いものです。
さて、時は戦国末期。戦乱が収まるにつれて武士たちも典雅を好む風潮が強まり、単に武勇のみならず茶道や華道といった文化的な素養も求められるようになりました。
今回はそんな乱世から治世へ移り変わる過渡期の一幕を、武士道のバイブル『葉隠』より紹介します。
秀吉主催の活け花大会にて今は昔、天下統一を果たした太閤・豊臣秀吉(とよとみ ひでよし)が全国の諸大名を集めて活け花大会を催した時のこと。秀吉は大名ひとり一人に花と道具一式を配り、銘々に活けさせました。
もちろん、好き勝手に活けてそれでおしまいではなく、きちんと活けられるか否かで各人の素養を見極める、いわば秀吉による人事考査の一環です。大名たちもその辺りの空気を読んでおり、その反応はさまざま。
こんな機会もあろうかと、あらかじめ修練しておいた器用者もいれば、領国経営に手一杯で花など手にとることもなく、鋏を持つ手元さえ覚束ない者もいたでしょう。