「おい、『すばる』に載った『不良』、もう読んだか?」
先日、殿にお会いすると、わたくしの顔を見るなり、冒頭の質問をあててきたのです。
殿が言う「不良」とは、現在発売中の文芸誌「小説すばる」2月号に掲載されている、長編読み切りのことであり、殿のいちばん新しい小説です。殿は3年程前から、とにかく小説に力を入れていて、かなり早いペースで新作を書き上げては、文芸誌にバンバン発表しています。
で、冒頭の問いに「すいません。買ってはいますが、まだ読めていません」と、弟子としてやや失態ぎみの、実に残念な答えを正直に述べると、
「なんだ、ちゃんと読んどけよ」
と、笑いながら指示を出したのでした。もちろん翌日、一気に完読いたしました。で、殿の新作「不良」には、殿が中学時代に出会った、恐ろしくケンカの強い、実在した番長がモデルの人物が出てくるのですが、殿は以前、
「俺たち団塊の世代の中学なんて、第1次ベビーブームの子供だから、生徒が2000人もいたからな。2000人の中の番長なんてのは、とんでもないワルでよ、本当にすごいんだよ。その逆で、2000人の中のバカは、もうどうしょうもないバカだったからな」
と、聞いたことがあります。さらに、
「俺の中学の時の番長なんて、学校にドテラ着て愛人と一緒にやってきて、門の前で待ち構えてて、登校してくる生徒から10円ずつカツアゲして、金が貯まるとそのまま遊びいっちゃうんだから。だけど、中学生で結婚もしてねーのに愛人がいるってのもおかしな話なんだけどよ」
なんて話も聞いたことがあります。さらにさらに、これはその番長のことなのか定かではありませんが、
「1回よ、学校に改造拳銃作って持ってきたヤツがいてよ。そいつが授業中、黒板に向かって書いてる先生の後頭部を狙って、その銃で撃ったんだよ。そしたら、パーン! って音と煙が上がって、弾が先生の後頭部に当たったんだけど、先生は『痛てっ!』って言って振り向いて『誰か、何かやったか?』って。何ともなかったんだから」
なんて話も聞いたことがあります。