動物の中には磁力を感じられる種が存在する。だが、人間もそうだと言ったら信じるだろうか?
かつて動物が磁力を感じるなどあり得ないと考えられていた時代があった。だがやがて、鳥などの動物は、長い距離を移動するために磁覚を駆使していることが理解され始めた。
それでもなお、人間についてはやはりあり得ないと考えられていた。ところが、そうした想定もぐらついているようだ。それは昨年行われたある実験のせいだ。
・磁場で作り出した檻の実験
カルフォルニア工科大学(アメリカ)の研究グループが行なったのは、特殊な「ファラデーケージ」を作り、その中に脳波キャップをかぶった人に入ってもらうという実験だ。
ファラデーケージとは、導体(コイル)に囲まれた檻のようなもので、スイッチを入れればコイルが周囲に磁場を発生させる仕組みになっている。
被験者には、防音室に設置されたファラデーケージの中に入り、そこに座って目を閉じてもらう。
image by:WANG, ET AL.
もちろん被験者にはケージが作動しているのかどうかは知らされないし、それが作動するタイミングや回数も同様だ。
防音室は真っ暗で、目で見て何かヒントがないか探ることはできないし、外部からの音は一切聞こえてこない。
ケージの制御は別室で行われたので、操作する気配から作動しているかどうかを察知することもできない。さらに、どの被験者にも同じ方向を向いて座ってもらい、磁場の方向によるバイアスが生じないようにされた。