賛否両論あったローソンの「デザイン」に改めて世間の注目が集まる結果となった。ローソンの竹増貞信社長は「納豆」や「豆腐」などの自社プライベートブランドの一部商品のパッケージデザインを現在のものから変更する方針を明らかにした。
ローソンは今年春にプライベートブランド商品のパッケージデザインをリニューアル。洗練されたシンプルなデザインは、若い女性の購買層を中心に好評だったが、商品名の印字や内容物の写真、イラストが小さく、商品の内容がわかりにくかったため、「視覚障害者や老人など誰にとってもわかりやすい『ユニバーサルデザイン』が常識となっている今の時代にそぐわないデザインだ」と一部から批判の声があがっていた。確かに、「NATTO」「TOFU」と表記されたパッケージでは、いったい何の商品かが伝わりにくいと指摘を受けても仕方ないかもしれない。
加えて、新デザインがもたらした影響は他にもあると言う。
「ローソンの新デザインは商業的な視点から見ても失敗だったと言えるかもしれません。新デザインは消費者への訴求力が弱く、『商品の魅力が伝わって来ず、買う気が起きない』と購買意欲の低下を招いています。今回の失敗の原因はデザインを担当した佐藤オオキ氏と一般消費者との感覚のズレにあると言えるかもしれません」(経済ライター)
佐藤オオキ氏はルイ・ヴィトンやアップルなどの製品のデザインも手がける世界的なデザイナーだ。
「佐藤オオキ氏は無駄なものを極力持たない『ミニマリスト』としても知られています。必要最低限であることを美とするミニマム主義が、情報の少ないデザインを生み出したのでしょう。ブランド品ではデザインの洗練さが重要視されますが、コンビニの利用者が売り場で求めているのは情報です。売り場で商品の情報を可能な限り取り込んで吟味し、選択するというのが消費者行動のメインストリームである中で、新デザインはわかりづらく消費者に訴えかける情報が少なすぎて購買意欲を大きく削ぐ結果になってしまいました」(前出・経済ライター)
また、感覚のズレに加えてミニマリストの生活スタイルのズレも、新デザインの効果に影響を及ぼしているという。
「ミニマリストの多くは必要なもの以外の買い物をしません。コンビニでもあらかじめ決めていたものだけを購入するのです。彼らの生活には美味しそうなパッケージを見てついつい手にとってしまうということがないのです。ミニマリストではない人との生活文化のズレが、いまいち新デザインが受け入れられなかった要因かもしれません」(前出・経済ライター)
今回多くの批判を受けローソンは「消費者の声を受け入れて改善していく」との姿勢を表明している。現代において、コンビニのような公共性の高い施設で求められているのはオシャレと機能性の両立かもしれない。
(浜野ふみ)