歴代総理の胆力「福田康夫」(2)揺さぶられ続けた「背水の陣内閣」

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歴代総理の胆力「福田康夫」(2)揺さぶられ続けた「背水の陣内閣」

 しかし、政権という重責への執着も乏しかった福田は、何を成すためにトップリーダーのイスに座るのか。掲げた政策課題は、いささか貧弱なものであった。

 福田は総理就任とともに掲げた自らの内閣を「背水の陣内閣」と、なんとも悲壮感に満ちたキャッチフレーズとし、安倍政権下で続出した「政治とカネ」の不祥事の一掃、「年金」の記録漏れ問題の解決を政権運営の“重要項目”としたにとどまった。

 なるほど、政権に重みを欠き、初めから自民党内のガバナビリティ(統治)を持ち得なかったことから、常にハードルに足を取られ続けた。就任早々に防衛省の不祥事発覚、「後期高齢者医療制度」の開始や「ガソリン暫定税率」を巡る混乱の一方で、「年金」問題もその根の深さが次々と明らかになるといった具合だった。さらに、自民党内の消費税増税による財政再建派と「小泉構造改革」を支持する経済成長派がバトル、そうした中で福田は自らその方向性の指針を示すリーダーシップも見せなかった。

 こうした福田政権の本質を見て取られたように、苦境脱出のため模索した解散・総選挙も、与党を組む公明党にゴネられて打てなかった。一方で、そうした政権の窮状を見て取った民主党の小沢一郎代表(当時)に自民党との「大連合」話を持ちかけられ、この話に安易に乗ろうとしたことで、ついには自民党内から政権維持のダメ出しを受けた。

 元々、プライドだけは人一倍高かった福田は、結局、安倍と2代にわたる「政権放り出し」を余儀なくされたのである。

 退陣表明の記者会見の席上、記者から「総理の会見はまるで他人事のように聞こえる」とやられた福田は、語気を荒げ言い放ったのだった。

「私は自分自身を客観的に見ることができるんです。あなたとは違うんです!」

「客観的に見ることができる」とは、ナニを意味するのか、自民党内には、「“総理の器ではない”ことを自ら告白したということではないか」とする見方さえ出たのである。

 政権取りに死力を尽くした者と、担がれてそのイスに座った者の差は、政権への「執着度」の違いであることを、福田は改めて示した格好であった。

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