『宝島』(スティーヴンソン)、『海底二万マイル』(ヴェルヌ)など、冒険小説は何歳になっても、私たちの心をつかむ。もしかしたら、私たちには「知らない場所を、自分の知力と体力を頼りに旅してみたい」という本能的な欲求があるのかもしれない。
『天風』(小山結夏著、幻冬舎刊)もまた、私たちの奥深くに刻まれた旅心を刺激してくれる小説だ。「神子」にまつわる伝説と、その伝説に魅せられた人たちが織りなす人間ドラマと、どこにいるかもわからない人を探す旅。それは、インターネットやSNSが普及した現代に生きる私たちにはもうできないものなのかもしれない。
今回は著者の小山結夏さんにインタビュー。この物語に込めた思いについてお話をうかがった。
■ハートフルで心躍るファンタジー『天風』はいかに書き上げられたか――『天風』につきましてお話をうかがえればと思います。昨年刊行された作品ですが、小山さんがこの作品で表現したかったもの、書きたかったことについてお話をうかがえればと思います。
小山:この作品は、まさにそれぞれの宿命が複雑に交差する物語を描いています。神子を連れ去った事により、大切なものを失ってしまった理京と、その神子である風丸の関係。命を救える玉を体に持つ風丸と、命が短い琴芽の関係。龍子を倒し、都を救おうとする斎と、龍子を連れ去ってしまった理京の関係。神子を放った爽馬と風丸、そして斎の関係。
個々がそれぞれに複雑な事情を抱えながら出会い、互いに信頼と絆を深めていくヒューマンストーリーです。
その他、旅の中で出会う人たちとの交流をハートフルに描いています。読者の方の心に残るように、物語の中には、人生を再生する力、広い世界へ踏み出す勇気、命の尊さなど、様々なメッセージが含まれています。
――わくわくするような冒険の物語です。この冒険の舞台としてイメージされた場所はありますか?
小山:実際に行った場所とかではなく、子供の頃に見た宮崎駿さんの作品や、世界名作劇場などがぼんやり浮かんでいたと思います。