かつて「ユニバレ」という言葉があったことをご存じだろうか。着ている服が『ユニクロ』だと、バレてしまうことの略語で、以前は「ユニバレ」を恥ずかしいと感じる人も多かった。
その気持ちが生まれるのは、「ユニクロの服自体がダサいから」という訳ではなく、ファストファッションの象徴であったため、〝何となくオシャレじゃない〟という風潮があったから。しかし、ここ最近は、ユニクロの服自体が〝オシャレ〟扱いされている。
確かに以前から「ユニクロなのにオシャレじゃん!」とモテはやされる風潮はあったが、現在は「ユニクロ〝だから〟オシャレ」になりつつある。安い服を頑張ってオシャレに着こなすプチプラファッションではなく、ブランド独自のデザイン性が評価され始めている。
実際にSNSなどでは、
《ユニクロの新作のブラウスかわい過ぎない?》
《ユニクロのパーカーに一目ぼれして速攻で買った》
《何かいろいろなコラボ商品とか出してるし、かなりオシャレになったと思う》
《今年の秋冬はどんな商品を出すのか期待》
などといった声が。いつの間にか〝新作〟を追う熱心なユーザーもいるオシャレブランドになっているのだ。
「ユニクロ」が“オシャレ”になった背景「ユニクロ」の衣服が〝オシャレ〟として浸透しつつある理由は、やはり〝誰でも着られる〟という「ユニクロ」ならではのシンプルなデザイン性にあるように思える。一時期、NYが発祥とされる「ノームコアファッション」がブームになったこともあり、無地でシンプルな衣服に回帰する流れもあった。そのため、「ユニクロ」へ行けば、お金をかけずに流行の服を着ることができたのだ。
また「ユニクロ」よりも、さらに価格帯の安い『GU』の登場が、相対的に「ユニクロ」のブランドを〝格上げ〟させたことも大きい。「ユニクロ」と「GU」はどちらも、『株式会社ファーストリテイリング』傘下の企業。そのため、両者を差別化させるべく「ユニクロ」を〝オシャレなブランド〟として打ち出す必要があったのかもしれない。
しかし「ユニクロ」がオシャレだとモテはやされる風潮には、《シンプルだから、ダサいダサくないの次元ではない》と異を唱える人も。そもそも〝オシャレorダサい〟は、ファッションで個性を追求するから生じるものであって、最大公約数化されたシンプルなファッションには、オシャレという概念すらないということだ。
結局のところ、ファッション=アートという志向のオシャレを捨てている人が多いだけなのかもしれない。人々のセンスが洗練されたというよりは、単純に経済的な事情で、服にお金をかけられない人が増えただけなのではないだろうか。「ユニクロ」が〝ただの安いファッション〟と思われなくなった社会は、それはそれで少し考え物のように思える。
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