名作は1話目から面白い、というのが漫画好きの間では定説。とくに『ONE PIECE』における第1話の完成度は目を見張るものがあり、多くの読者が「完璧」だと称賛している。本稿ではそんな伝説の回を振り返り、神業のような漫画テクニックを分析していきたい。
気づけば海賊たちの虜に…同作で最初に心をつかまれるのは、やはり1ページ目。ここではゴールド・ロジャーがこの世の全てを手に入れた「海賊王」であり、彼の処刑をもって「大海賊時代」が始まったという情報が詰め込まれていた。今でこそサラっと読み流してしまいがちだが、海賊王も大海賊時代も実在しない造語。しかし、その字面にはリアリティーがあり、壮大なストーリーを想像させてくれる。読者の心を惹きつけてやまない、漫画のお手本のような導入と言えるだろう。
扉絵を挟んだ後、5ページ目では早くも主人公であるルフィが登場する。ルフィは自分の覚悟を示すため、ナイフで頬を突き刺すという破天荒な振る舞いを見せており、インパクト抜群。ここで読者に「なぜそんな行動をとったのだろう?」と興味を抱かせた上で、ルフィが海賊を目指しているという設定が明かされていく。
主人公の性格がテンポよく紹介される中、シャンクス率いる「赤髪海賊団」の陽気な振る舞いが描かれるのも見逃せない。史実における海賊は時に残虐な行いをする悪人だが、同作の海賊はやさしく陽気な人々のようだ…。と、ここまで読み進めるだけで基本的な世界観がすっと頭に入ってくる。
また、物語の大きな軸となっているのが、酒場のシーンから登場する「山賊」だ。彼らはルフィたちに害をなす、明確な敵として描かれている。そのことによって、海賊をヒーローとして際立たせるのに一役買っているのだ。
「ルフィ」が出来上がっていくまで第1話の20ページ目では、ルフィが「ゴムゴムの実」を食べたことが明かされる。ゴム人間という衝撃的な設定であり、誰もが「ゴムゴムの能力で何ができるのか」「他にはどんな悪魔の実が出るのか」などと好奇心をかき立てられてしまうはずだ。しかし驚くべきことに、この段階ではほとんど能力の話は掘り下げられない。
ゴムゴムの能力が活躍するのは、作中で10年の月日が経った後のこと。