相続税の実務上、問題になることの一つに、非上場株式のような、取引相場のない株式の評価があります。取引相場のない株式は時価が分かりませんので、国税が独自のルールを設けて評価を決めていますが、その評価方法は会社の規模や株主の属性に応じて異なっており、非常に複雑でいくつかの方法があります。これらの方法のうち、規模の小さい会社の同族株主の評価として使われる方法として、純資産価額方式があります。
この方法は文字通り、会社の純資産価額に着目して評価する方法を言います。株価評価の理論上、会社の純資産価額は発行済株式の時価総額に等しいという考え方がありますので、その考え方を基にした評価方法です。
■純資産価額方式は決算書がベース
こういう訳で、純資産価額方式の計算においては、会社の決算書が必要になります。ただし、この決算書の金額をそのまま使う訳ではなく、その決算書の金額を相続税が課税されるタイミングである、相続発生時に評価しなおして相続税評価額ベースの純資産価額を算定することになります。
このような算定をする理由は、個人事業主の相続税と、計算根拠を同一にするためです。事業を営む個人事業主が死亡した場合、その死亡時点で事業用資産を評価して相続税を計算しますが、法人はあくまでも株式を持つことで間接的に事業を行っているにすぎませんから、それと同様の計算根拠で計算しないと、個人事業主と法人とで税負担に差が生じることになります。
■ミスが多い論点
このように、会社の決算書を基に、相続時の評価額で純資産を計算するのが純資産価額方式ですが、よくあるミスとして、即時償却の対象になった資産の取扱いがあります。即時償却とは文字通り、資産を取得したタイミングでその全額を経費とする方法です。全額を経費にしますので、会社は資産を持っていても、その資産は財産と債務を表現する決算書(貸借対照表)には掲載されません。
しかしながら、会社としては資産を持っていることは事実であり、その資産を売却しようと思えばできるため、その即時償却の対象になった資産については、貸借対照表には計上されていないにもかかわらず、純資産価額方式の計算上、資産を会社が持っているとして純資産価額を計算する必要があるとされています。
決算書がベースとなる純資産価額方式のよくあるミスを元国税の税理士が解説
2021.11.09 19:00
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