われわれにとって避けようのない死を、心理学を用い研究している人たちがいる。「死生心理学」という分野である。キューブラー・ロスの「死の5段階仮説」が有名ではあるが、批判も多い。真偽は定かではないが、キューブラー・ロス自身は死を到底受け容れられず、怒り心頭のまま亡くなったという話を聞いたことがある。死を理解しているつもりでも、いざ自分のこととなると「自分だけは死なない」と(無意識に)考えてしまうのだろう。だからこそ死生心理学も参考にしつつ、「死ぬ練習」が必要なのである。
■「存在脅威管理理論」とは
死生心理学の研究に「存在脅威管理理論」というものがある。これは「いつかは死ぬ」という恐怖が、一見無関係とも思える行動や思考に逐次影響を及ぼしているという理論である。悲惨な映像を観たり死観尺度に回答したりして、自分が死ぬべき運命であることを顕在化させられた実験参加者は、「ブランド物を購入したくなり」「自分と異なる政治的立場への攻撃性を高め」「恋人を得ようとする反応を強め」たという。死への恐怖を低減させようとした結果であると考えられる。コロナ禍でマッチングアプリが隆盛したというが、これも存在脅威管理理論から説明できるかもしれない。
■3つに分類される死
死生心理学では、死への恐怖は3種類に分かれると考える。
(1)無や虚無に帰ることへの恐怖
(2)段階的に死へ移行することへの恐怖(老いや重病にかかることなど)
(3)死の瞬間の苦痛への恐怖
これらのいずれも自分ではコントロールできないことが特徴的である。コントロールが一切できないのに、(1)の無や虚無に帰ることは決定的であり逃れられない。この葛藤が、どうせ死ぬのであるから生も虚無である、といった態度に繋がることもすでに死生心理学で指摘されている。
だが死生心理学はその虚無的態度の先を目指す。死に対する理解を深め、生をよりよく生きるにはどうすればよいかを考えるのである。
■死を学ぶことで生にスポットをあてる
これらを考えるには特段怪しげな宗教に入信する必要もなければ、バックパッカーとして秘境の地に旅立つ必要もない。死に関する文献やネット記事をいくつか参照しつつ、自分で考えをまとめ、信頼できる誰かに相談するだけでいい。あとは日常を懸命に生きる。これが死を用い、生をよりよく生きるということではないだろうか。
【死生心理学】不可避の死を恐れて距離を置くか或いは理解に努めるか
2022.06.30 19:00
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