死に際して墓を作る生き物は人間だけであると考えられている。土を掘り死体を埋める動物もいるが、それは人間のように意味を持った表象としての墓ではない。人間は死んでいったものを想うから墓を造るのである。そして人間は、時代と共にさまざまな動物と多様な関係を持って生活を営んできた。それ故に全国には多くの動物のための墓が存在する。
■動物のお墓は古くから存在した
日本では、七千年前の縄文遺跡から埋葬された縄文犬の骨が発掘されており、弥生遺跡からは食用に供された犬の骨が出土している。飛鳥時代には、物部氏の武将の飼っていた犬墓が造られたことが『風土記』『日本書紀』などに記されている。古くから動物のことを大切にして墓を造っていたことが分かるだろう。現代でも、ペットのための霊園などがあり、人間が動物を大切に想う気持ちは時代を問わない。
■忠犬ハチ公のお墓
日本を代表する忠犬であり、渋谷のシンボルの一つでもある「ハチ公」。そのハチ公の墓は飼い主の上野英三郎さんの墓地の一角にあり、分骨が埋葬されている。なお、遺骸は剥製にされ、国立科学博物館に保存されている。日本では、ペットを人の墓地に埋葬することやペットと人の合葬は珍しいことではなく、現代のペット霊園にも、合葬可能な「with pet 墓」が各地にある。2015年東大農学部にハチ公と飼い主の元東大教授の上野博士のブロンズ像が建立された。2012年には博士の故郷である津市の近鉄久居駅前にも建てられている。ハチ公単独の像は渋谷駅前、大館駅前、韓国の金羅北道呉癌里にある義犬公園、カンボジアのプノンペン市ノロドム通りにもある。
■漱石公園の猫塚
この塚は夏目漱石の飼っていた犬、猫、小鳥の供養のために大正時代に建立されたものであるが、昭和28年に復元修理された。『吾輩は猫である』のモデルとなったネコの墓はどこにあるのだろうか。漱石はモデルのネコが死んだ時、「辱知猫義久々の病院の処療養不相叶昨夜いつの間にかヘッツイ(かまど)の上にて逝去致候…但主人『三四郎』執筆中につき御合葬には及び不申候」と黒枠の死亡通知を門下生に送り、早稲田南町の自宅の庭に埋めて、墓標に「此の下に稲妻起こる宵あらん」という句を書いたとされる。しかし、ネコは雑司ヶ谷墓地にある夏目家の墓に葬られているとも言われる。
■最後に…
動物の墓は、猫や犬だけでなく、牛や馬など、古くから人間の家畜として飼われていた動物、鳥や鹿、中には蜂やハマグリなどの墓もある。そこには、生き物の命を大切に想う人間の気持ちが込められている。
■参考資料
■依田賢太郎『いきものをとむらう歴史 供養・慰霊の動物塚を巡る』(2018年7月 社会評論社)
忠犬ハチ公のお墓や夏目漱石が飼っていた犬や猫、鳥のお墓を紹介
2022.10.18 19:00
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