令和4年(2022年)NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」、とうとう終わってしまいましたね。1月9日(日)に第1回放送「大いなる小競り合い」の幕開けにワクワクしていたのが、つい先日のようです。
伊豆の片田舎で駆けまわっていた土豪の小倅・北条義時(演:小栗旬)が、あれほど立派に成長し、あんな最期を遂げるとは誰が想像したでしょうか。
今回は全48回放送を振り返って、筆者的ランキングなどを総まとめ。「そんなこともあったね」と振り返りつつ、また12月29日(木)から放送される総集編の予習にもどうぞ。
目次
心に残った名場面TOP5一、源頼朝の挙兵(第4回放送「矢のゆくえ」)
一、上総介広常の粛清(第15回放送「足固めの儀式」)
一、嵐を呼んだ阿野全成(第30回放送「全成の確率」)
一、畠山重忠と一騎討ち(第36回放送「武士の鑑」)
一、政子の名演説(第47回放送「ある朝敵、ある演説」)
※順不同
20年の雌伏を乗り越え、ついに平家討伐の兵を挙げた源頼朝(演:大泉洋)。できれば佐々木経高(演:江澤大樹)の放った「源家征平氏最前一箭(げんけのへいしをせいするさいぜんのいっせん)」をもっと思いを込めて欲しかったですね。
梶原景時(演:中村獅童)に斬られることは予習済みだった上総介広常(演:佐藤浩市)。しかし一刀で首を刎ねず、烏帽子も脱げて見苦しくあがく様子は、20数年来の広常ファンとして実に胃腑の苦いものでした。
それまでギャグ担当枠だった阿野全成(演:新納慎也)が、最後の最後でその法力を発揮。愛妻・実衣(演:宮澤エマ)への強い思いに胸を打たれます。
騎馬から転げ落ちて殴り合う北条義時と畠山重忠(演:中川大志)。撮影現場のアドリブから生まれたそうで、血沸き肉躍る名場面と言えるでしょう。よしいけ次郎、そこだ!
そして政子の名演説。目を病んでしまった大江広元(演:栗原英雄)さえ開眼せしめた彼女の思いが、御家人たちの胸を打ちました。もう少し尺をとって「武士の鬱屈、坂東の怨み」を盛り込んで欲しかったと思います。
推し御家人TOP5名一、上総介広常(演:佐藤浩市)
一、畠山重忠(演:中川大志)
一、和田義盛(演:横田栄司)
一、大江広元(演:栗原英雄)
一、安達盛長(演:野添義弘)
※順不同
主人公の北条一族、殿堂入りの頼朝公はあえて除外しました。それだけで埋まってしまいますから。
子供の時から推しだった広常・重忠・義盛は不動。坂東人の偏屈さを絵に描いたような広常、東国男の理想をこねて丸めたような重忠、そしてこんなに可愛い義盛がいまだかつていたでしょうか。
また文士(文官)チームでは冷徹非情かと思いきや、尼御台への愛が重すぎる広元。そして笑顔で野の花を優しく撫でる盛長、尊すぎます。
ドクロを取りに戻った際、群がる和田勢を華麗に斬り伏せた広元のアクションシーンは最高でしたね。また頼朝の流人時代からずっと奉公してきた盛長。二人の絆を感じる場面をもっと見たかったです。
この人出して欲しかった5名一、藤原邦通(ふじわらの くにみち)
一、伏見広綱(ふしみ ひろつな)
一、坂額御前(はんがくごぜん)
一、北条重時(少年時代のみ。演者不明)
一、伊賀光季(演:日笠圭)
※順不同
藤原邦通:元京都の遊び人で、通称は藤判官代(とうのほうがんだい)など。安達盛長の紹介で頼朝に仕え、スパイとして山木兼隆(演:木原勝利)の元へ潜入したほか、挙兵後も数少ない文官として活躍しました。
伏見広綱:亀の前事件における最大の被害者。亀(演:江口のりこ)を匿わされたことで自宅を壊され、挙げ句に政子の癇癪で追放されてしまった可哀想すぎる人。ちなみに他の女へラブレターの代筆もさせられています。
坂額御前:梶原景時の死後、越後国で挙兵した女傑。弓の名手で奮戦するも捕らわれ、甲斐源氏の浅利義遠(あさり よしとお)に嫁ぎました。和田義盛に嫁いだ巴御前(演:秋元才加)伝承のモデルになったという説も。
北条重時:義時の三男で、比奈(演:堀田真由。姫の前)との子。兄・北条朝時(演:西本たける)とチャンバラしていた場面のみ登場。はっちゃけた兄と対照的なしっかり者で、兄弟の絡みが見たかったです。
伊賀光季:ご存じ京都守護。ここではあえてピックアップしました。鎌倉の楯として命を棄てた戦いぶりは、是非とも描いてほしいところ。少なくとも源頼茂(演:井上ミョンジュ)と同程度以上に尺をとるべきでしょう。
このエピソードやって欲しかった5選一、頼朝の水干を奪い合い
一、無断任官した御家人たちへの罵倒
一、千葉介常胤のワガママ
一、みんなで楽しくどんちゃん騒ぎ
一、朝比奈義秀(演:栄信)の惣門破壊
※順不同
挙兵以来の忠義に報いるため、頼朝が自分の水干を岡崎義実(演:たかお鷹)に与えたところ、嫉妬した上総介広常が喧嘩をふっかけます。あわや大乱闘になりかけたが、三浦義連(義澄の末弟)に仲裁されました。
平家を討伐後、源義経(演:菅田将暉)はじめ御家人たちが朝廷から勝手に官職を受けてしまったことを頼朝が激怒。言うも言ったりボキャブラリー豊かに各人を罵倒、日ごろからよく見ているものだと感心してしまいます。
頼朝が将軍政所を拓いた際、新しい下文に千葉介常胤(演:岡本信人)が猛抗議。「頼朝様の花押(かおう。サイン)付きじゃないから(今までのと)交換したくない!」とダダをこね、頼朝は特別に書き添えてあげました。
『吾妻鏡』を読むと、頼朝は御家人たちとよく酒宴を開いています。一歩間違えば殺し合いが始まる一方、日ごろはみんな飲んで歌って楽しいひとときを過ごしていました。そんな主従の絆も、垣間見たかったですね。
そして和田合戦におけるハイライトは朝比奈義秀。彼のモンスターぶりをもっと見たかったです。劇中だと御所の門を破城槌で壊していましたが、最後の一蹴りくらい義秀に譲ってあげてもよかったのではないでしょうか。
あの人たちのエピローグ【元寇・文永の役】…文永11年(1274年)10月5日~20日、モンゴル帝国(元王朝)襲来
【元寇・弘安の役】…弘安4年(1281年)5月21日~閏7月7日、モンゴル再襲来
【元弘の乱】…………元弘3年(1333年)5月21日、鎌倉幕府滅亡
終わりに宇治川の先陣争い(本編では出なかったけど、佐々木高綱と梶原景季)。歌川国芳筆
他にもまだまだネタはあるのですが、キリがないのでこの辺りにしようと思います。拙いレビューに1年間お付き合い下さり、誠にありがとうございました。
毎週々々楽しみにしていて、この魅力を伝えきれないもどかしさに悩みながら、ここまでやって来られたのは「ブエイ(武衛。鎌倉殿ファン)」がたのお陰です。
今回の大河ドラマをキッカケに、平安~鎌倉時代にも興味を持って下さる方が増えると、ファンとしては嬉しい限り。できればマンガでもいいので『吾妻鏡』を読んで、大河ドラマよりもほのぼのと残虐でハートフルな世界をお楽しみいただきたく思います。
さて、年末年始に総集編の放送があります。皆さんは名残を惜しむ派ですか?それとも寂しいからもう見ない派ですか?(筆者は後者です。でも、やっぱり見ちゃうかも。また武衛たちに会いたい!)
【鎌倉殿の13人 総集編】
[総合]12月29日(木)
第1章 13:05~
第2章 14:15~
第3章 15:25~
第4章 16:31~
[BS4K]12月31日(土)
第1章 23:45~
第2章 24:55~
第3章 26:00~
第4章 27:06~
[BS4K]令和5年(2023年)1月2日(月)
第1章 8:00~
第2章 9:10~
第3章 10:15~
第4章 11:21~
※NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」公式サイトより
※放送日時は変更になる場合があります。
さて、来年は『吾妻鏡』を愛読していた徳川家康の物語「どうする家康」。頼朝や義時に多くを学んだ青年がどんな成長を遂げていくのか、令和5年(2023年)も楽しみに見守っていきましょう!
【完】
※参考文献:
三谷幸喜『NHK大河ドラマ・ガイド 鎌倉殿の13人 前編』NHK出版、2021年12月 三谷幸喜『NHK大河ドラマ・ガイド 鎌倉殿の13人 後編』NHK出版、2022年5月 三谷幸喜『NHK大河ドラマ・ガイド 鎌倉殿の13人 完結編』NHK出版、2022年10月日本の文化と「今」をつなぐ - Japaaan