現存する日本最古の和歌集である『万葉集』には、実にさまざまな歌が収められています。驚くほど現代の私たちに似た感覚を持つ歌もあれば、そうでない歌もあります。
今回ご紹介する歌は、少しユニークでロマンチックとも受け取れるある歌です。
歌そのものをご紹介する前に、まずはその作者をご紹介しましょう。歌の作者である大伴坂上郎女(おおとものさかのうえのいらつめ)は、『万葉集』の代表的な女性歌人です。
大伴旅人の異母妹であり、大伴家持の叔母で姑でもあります。彼女の歌は『万葉集』に84首(長歌・短歌合わせて)も収められています。
彼女の歌の特徴としては、技巧的でありながら、叙情性もあると評価されています。また、男性との相聞歌も数多くありますが、こちらは実体験というよりは彼らへの親しみを表現したものだと言われています。
眉がかゆくなったら恋人に会える!?今回ご紹介する大伴坂上郎女の歌は、「月立ちて ただ三日月の 眉根(まよね)掻(か)き 日(け)長く恋ひし 君に会へるかも」というものです。「月立ちて」は「新月になって」という意味があります。「三日月の形をした眉を掻いたらあなた(恋人)に会えた」という歌です。ちなみに、「三日月の形をした眉」は当時、中国風の最新モードとされていたそうです。
ここでのポイントは「眉を掻く」という点。眉毛を描くということ、そして眉をポリポリと掻くことの両方の意味があるとされています。当時は、特にかゆくて眉を掻いたら好きな人が会いに来てくれる、という迷信・おまじないのようなものがあったとか。これは、中国の唐の時代に書かれた小説である『遊仙窟』にある一節が由来になっていると言われています。
宴の場で詠まれた雰囲気から考えると、女性が好きな人を想って一人でひっそりと詠んだ歌かと思いきや、この歌は大伴坂上郎女が親族と宴をしたときに詠まれたものだと言われています。宴という場を盛り上げるために詠んだ恋歌だと言われています。
いかがでしたか?この記事が、みなさんが少しでも日本文化や歴史の面白さに興味を持つきっかけになれば嬉しいです!
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