「これ、誰の草履......?」
愛媛県内の村の入り口や街角には、そんな疑問が浮かぶほど巨大な草履がぶら下がっています。
つま先から踵まで、その長さは1メートル超。人が履くものとは思えない大きさです......。
これは何か? 愛媛県の一部地域では「大草履(おおぞうり)」を作る風習が、今も受け継がれているのです。
一体、何のために作られ、なぜ村の入り口などに吊るされているのでしょうか。
Jタウンネット記者は、大草履を展示している「愛媛県歴史文化博物館」の学芸課・松井さんに話を聞きました。
巨大な草履で「村を守る」県内で見られる大草履の意味について、松井さんはこう説明します。
「これらには、『こんな巨大な草履を履くほどの大男が、この村を守っているぞ!』と見せかけることで、災いを遠ざけようという人々の願いが込められています」(愛媛県歴史文化博物館 学芸課・松井さん)
つまり、大草履は疫病や悪霊などの災いを村に入れないための「魔除け」。
そのため、村の入り口や境目に掲げられているのです。
大草履の風習は、愛媛県内でも地域によって呼び名や習わしが異なる、と松井さんは話します。
さらに詳しい情報を求め、愛媛県教育委員会が2024年3月に発表した「愛媛の祭り・行事 -愛媛県祭り・行事調査報告書-」の執筆にも携わった「佐田岬半島ミュージアム」の高嶋館長にも話を聞きました。
愛媛県内でも、形や呼び名はさまざま高嶋館長によれば、愛媛県には「愛媛県の大草履」と呼べるような一つの統一された風習があるわけではありません。似た目的を持つ風習が、地域ごとに少しずつ違う形で受け継がれているというのです。
たとえば、愛媛県の中部にあたる中予の山間部では「鬼の金剛(こんごう)」と呼ばれる風習があります。大草履に加えて巨大な箸や藁の弁当、しゃもじなどを集落の入り口に吊るし、鬼や疫病が入らないよう祈るそう。
一方、南予の伊方町では、大草履を村境に祀る風習が残っています。そこには、「二つの設置場所をひとまたぎできるほどの大男が、村を守っている」という伝承も語り継がれているといいます。
ところ変われば、同じ「災いを遠ざける」願いも、ずいぶん違った形になるようです。
愛媛県内の街角や村の入り口で目にする、巨大な大草履。
何も知らなければ、どこか不気味にも見える光景ですが、形や習わしは違っても、そこには「村に災いを入れたくない」という共通した願いがありました。(ライター/ころんころ)