ある朝、Cさんは幼い娘を抱いて、バスに乗っていた。
目的地は警察署。認知症の祖母が保護されたと連絡を受けていて、急いでいた。
<Cさんからのおたより>
娘がまだ1歳半頃のことです。
近くに住む祖母が認知症となり、夜中に徘徊する事が時々ありました。
祖母と同居している叔父は地方への単身赴任中で、叔母は食品工場勤務での3交代勤務をしていました。
私は娘の出産後すぐに離婚することとなり、実家へ身を寄せていましたが、祖母が徘徊で警察に保護され、叔父、叔母と連絡が取れないとのことで、こちらへ連絡が来ることも。
私の母も仕事をしていたため、私が祖母を警察署まで引き取りに行く機会もありました。
通勤通学ラッシュ時に迎えに行くことにある日の朝、警察から祖母の徘徊で保護されていると連絡があり、小さな娘を抱いて市バスに乗り、警察署へ出向くことに。
ですが、ちょうど学生さんや会社へ向かう方々が沢山乗り合わせる時間。少し気後れしながらも、不安がっているであろう祖母の元へ向かわなければと、必死で混んだバスに乗り込みました。
当然席は空いておらず、見つけた手すりにしがみついていたところ、
「こんな時間に子供抱えてバスに乗るとか迷惑だ」「子供がかわいそう、どうせ暇なんだから時間を考えろ」
と、小声で乗客からのクレームが聞こえてきました。
すると、ドアが閉まりバスが発車したのも束の間、5メートルほど先でバスが停まりました。
何事かと思っていると、運転手さんのアナウンスが始まったのです。
「大変混み合っておりご迷惑をおかけします。皆様の安全をお守りしたくお願い申し上げます。そちらにお座りの学生様、優先席が本当に必要なお客さまにお譲りいただけないでしょうか?」
一斉に優先席に視線が注がれ、寝たふりをしていた学生さんもバツが悪くなったのか席を立ち、どうぞと譲ってくれました。
申し訳なさもありましたが、ありがたく席を譲ってもらい、警察署まで無事に到着できました。