彼女はいま、どこでどうしているんだろう――。
福岡県在住の30代女性・Uさんが思い出すのは、彼女の初産に立ち会った実習生のことだ。
<Uさんからのおたより>
人生初の出産。まだ本格的な陣痛が始まる前、産院のベテラン助産師さんが「今、学生が実習に来ているんだけど、の出産に立ち合わせてもいいですか?」と聞いて来ました。
「私のお産でよければどうぞ」と引き受けると見るからに若い学生さんが入室し「立ち合わせていただきます。よろしくお願いします」と気持ちよく挨拶をしてくれました。
助産師になるまでに何人のお産に立ち合わないといけないのかなど実習について聞いたりしながらしばし和やかに会話を楽しんでいました。
陣痛が始まると...そのうちに少しずつ陣痛の痛みが増し始め、身体の中から骨を砕かれるような強烈な痛み、拷問されているような痛みに身悶えする事態に......。
「陣痛ってこんなに痛いの?!」と脂汗を滲ませながらひたすら耐える中、実習生の子がずーっと腰をさすってくれていました。
途中、ナースステーションに戻るため私の側を離れている間、夫が代わりに腰をさすってくれましたが、全く効果がありません。内心「早く戻ってきて〜!!」と痛みに悶えながら必死に目で彼女を探していました。
いよいよ出産間際になり、陣痛の間隔が2~3分になってくると、あまりの痛みに「いやぁぁあ! 痛〜い! もう産みきらん! 帝王切開で産ませて〜!!」と泣き叫ぶ始末......。
その傍らで実習生の子は「初めてなのにいきみ逃しのやり方上手ですよ」と親身に声をかけてくれながら、ずっと砕けそうな腰をさすってくれました。
その後そのまま無事に自然分娩で出産することができましたが、彼女がいなければ乗り越えられなかった人生初のお産でした。出産後、その実習生の子に「ほんっとうにありがとう」と誰よりも真っ先に御礼を言いました。
その子は市民病院に就職が決まっていると言っていましたが、彼女が就職した翌年の4月に熊本大震災があり、市民病院は崩壊し建て直すまでの間閉院を余儀なくされました。