イスラム原理主義過激派のISISが大暴れし、現代版国盗り物語で大荒れ中の中東。別に原理主義者が常に過激派なわけでもないのですが、どうも原理主義と過激派は一セットで扱われることが多く、ちょっと可哀想な感じです。イスラム原理主義者だって僕たちと同じ人間なんだ! 笑いもするし泣きもするんだ!
というわけで、今回はイスラム原理主義を身近に感じられるよう、イスラム原理主義国家であるサウジアラビアでの休日の過ごし方を、サウジアラビア勤務四年目の辰巳一世さんにお尋ねしました。
砂丘を車で昇り降り!サウジアラビアの若者がハマる危険なアソビ
「休日は車で砂漠に出かけて、砂丘に登って、降りてを繰り返しているよ。参加者全員、男のみで」
何を言っているのでしょうか……私にはちょっと分かりません……。
詳しく聞いてみたところ、これは「デザートサファリ」と呼ばれるもので、サウジアラビアではメジャーなレジャーとのこと。辰巳さんいわく、厳格な原理主義国家であるサウジでは日本にあるような娯楽施設、たとえば映画館やライブハウス、遊園地などが存在しないのだそうです。イスラム教の教え(ハディース)の中には音楽を否定していると取れるものがあり、その辺で過敏になった結果のようです。
大型ショッピングモールなどはありますが、サウジには勧善懲悪委員会なるものもあり、下部組織の宗教警察(ムタワ)が目を光らせているので、未婚男女のデートやナンパ、公の場での音楽やパフォーマンスなどは厳しく取り締まられるのだそうです。
そこで、サウジの若者たちは砂漠を車で昇り降りするのです。しかし、これが意外とエキサイティングなものらしく、斜度30~40度の坂を4WDで駆け上がるのは体感としては「ほとんど直角」。降りる時よりもむしろ登る時にスリルと爽快感を感じるそうです。
「エンジンをバリバリ吹かしながら坂を駆け上るのが楽しいんだ。時々横転するけど、まあ砂の上を転がるだけだからね。実はデザートサファリにはサウジ人女性も来てるらしいんだけど、いないのと同じだね。決して車から出ないから」
郊外の方ではドリフト族もぶいぶいと言わせており、こちらはデザートサファリと比べてもだいぶ危険なエンターテイメント。遊園地やジェットコースターを作らないばかりにサウジ国民は自前でスリルを求めていくようです。
なお、休日の過ごし方で許されているのがこれだけというわけではなく、サッカー、ダイビングなどのスポーツ系はOK。カードゲーム、ボードゲームなどのインドア系もアリで、映画館こそないもののそれぞれが自宅でDVDや衛星放送を見るのも自由とのことです(ただし、暴力描写、エロ描写は全カット)。
衛星放送では日本のアニメも視聴可能で、サウジではちびまる子ちゃん、一休さん、UFOロボ グレンダイザーが人気とのこと。しかし、サウジ人は異教のプリーストである一休さんのことを正確に理解できているのでしょうか? 「ハゲた子供」くらいにしか思っていないのでは……。
(写真/辰巳一世)
著者プロフィール
作家
架神恭介
広島県出身。早稲田大学第一文学部卒業。『戦闘破壊学園ダンゲロス』で第3回講談社BOX新人賞を受賞し、小説家デビュー。漫画原作や動画制作、パンクロックなど多岐に活動。近著に『仁義なきキリスト教史』(筑摩書房)