衝撃的な死を遂げた名優の遺作『誰よりも狙われた男』が遂に公開!

(c)A Most Wanted Man Limited / Amusement Park Film GmbH

 2014年2月2日、ニューヨーク。過去にアカデミー賞最優秀主演男優賞にも輝いた俳優のフィリップ・シーモア・ホフマンが、自宅アパートで腕に注射器が刺さったまま死亡しているのが発見された。室内には多量のヘロインが残されていたこともあり、遺体の状況と共に死因が薬物と報道されるや、FacebookやTwitterによってニュースは拡散。享年46。22年の俳優人生の中で出演した映画が50本を超えるホフマンの死に、世界中の映画ファンが涙した。

 そのホフマン最後の主演作となってしまった『誰よりも狙われた男』が、10月17日(金)より全国の映画館で公開される。

 しかし、注射器が刺さったままなんて……。

 ホフマンの名を目にしたとき、不謹慎ではあるが〝興味が湧き〟その人生を改めて調べてみた。

 代表作とされているのは、2005年に公開され、アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞した『カポーティ』。しかし、この映画はなんとも眠りを誘うゆったりとしたテンポで展開されるという印象しかなく、残念ながら私の記憶からは消え去ってしまっている。

 私の中の最高傑作は、ロバート・デ・ニーロと共演した『フローレス』である。オカマ役を抜群の表現力で演じ、圧倒的な存在感を放っていたホフマンの姿が、鮮明に蘇ってくるほど印象的であった。

 そんなホフマンだが、私生活では幼い3人の子供の良き父親だった。しかし、一方で、薬物の依存症から必死に立ち直ろうとしていたのも事実。昨年には、処方薬依存で10日間のリハビリ治療を受けていたという。一部の関係者の話によれば、あまりにも役に入り込むあまり、孤立してしまい孤独を感じていることも少なくなかったとも言われている。

 その孤独が薬物に手を染める原因となってしまったのであれば、まさに命を削った俳優人生と言えるのではないだろうか。

 ホフマンの遺作である同作が描くのは、9.11以降のテロ対策を軸とした現代の諜報戦。その中でホフマンは、ドイツ・ハンブルグの小さなテロ対策スパイチームを率いる男を、人間味たっぷりに演じきっている。

 ホフマンの世界に酔いしれることもできる1本でもあるのだ。

(取材・文/角政光<bashment>)

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