"朝日新聞叩き"で意気上がる読売、産経の大誤報「黒歴史」

 メディアの朝日新聞バッシングがすさまじい。

 週刊誌には、「売国」「反日」などと物騒な見出しが躍り、誌面で「朝日潰し」のキャンペーンが連日繰り広げられている。

 特に激しいのが、もともと朝日と敵対関係にあった保守系の週刊文春や週刊新潮。文春は、9月18日発売号で関連会社の「朝日新聞出版」による不正競争防止法違反疑惑をスクープするなど、攻撃の手を緩めていない。

「朝日叩きの記事は読者の反応もよく、売り上げも上々。反韓・反中ネタが受けたように、朝日バッシングは一種のブームになりつつある」(出版社関係者)

「慰安婦報道検証本」まで制作する読売新聞

 この状況に笑いが止まらないのが、朝日の商売敵である他の新聞社だ。

「従軍慰安婦報道で長年、朝日と対立してきた産経新聞は、朝日の木村伊量社長による11日の会見に社会、政治、経済などほとんどの部署から大量の記者を動員している。よっぽどテンションが上がったのか、会見の日、取材を終えて編集部で祝杯を挙げた記者もいた」(会見に出席した記者)

 読売新聞は、敵失に乗じた販売店による大規模な拡張を展開。「朝日『慰安婦』報道は何が問題なのか」と題した冊子を作って、朝日の購読者などに配り回っている。9月30日には、編集局制作の検証本も出版し、ライバルの追い落としに躍起になっている。

 ただ、こうした動きを「朝日のことを偉そうに言えた義理ではない」と現場の記者たちは冷ややかな目でみている。各社それぞれに触れられたくない〝黒歴史〟があるからだ。

 産経は、2011年7月7日に中国の江沢民・元国家主席が死去した、との大誤報を飛ばしている。しかも記事の元ネタは香港の新聞の後追い。号外まで出したものの、すぐに間違いだと判明した。

「3カ月後に小さな謝罪記事を出しただけで関係者の処分もまともに行わなかった。当時の社長が直々に記事にゴーサインを出し、会長もこの一件に関わっていたために厳しく責任を問うワケにはいかなかったようだ」(産経関係者)

 読売がやらかしたのは2012年10月11日。朝刊1面に、ハーバード大学の日本人研究者らが、ips細胞から心筋の細胞を作り、重症の心不全患者に細胞移植する治療を行ったとするスクープ記事が掲載された。読売はその日の夕刊1面でもこの〝快挙〟を報じたが、すぐにその報道に疑問が噴出。

「報じられたような事実はなく、研究者の経歴も真っ赤な嘘。読売の記者がニセ研究者の与太話に騙されただけだった。読売は紙面上で謝罪し、検証記事を出したが、責任者である編集局長は減俸程度の処分で済んでいる」(当時を知る全国紙記者)

 朝日は、批判記事が載った文春と新潮の新聞広告掲載を拒否したり、広告の見出しを一部差し替えたことでも批判を浴びた。ただ、他の新聞社も似たような〝検閲〟を行ってきている。

「2000年、渡辺恒雄会長の批判記事や巨人軍のスキャンダルを書き連ねた週刊現代の広告掲載を、読売は拒否している。同じようなトラブルは一度や二度ではありません」(大手広告代理店関係者)

 日経も2003年に社内の人事抗争の様子をすっぱ抜いた週刊現代の新聞広告を真っ黒に塗りつぶさせた〝前科〟がある。2012年には、社長と女性デスクとの親密な関係を報じた文春の広告掲載を拒否している。

 強きを助け、弱きを挫く……。溺れた犬をたたくのはマスコミのいつものやり口だが、みずからのことを棚に上げて他人を批判するご都合主義もまた、彼らの常套手段である。

 天に唾する、とはまさにことだ。

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