金融庁主導「地銀再編劇」メガバンク株主の地銀同士の合併加速!?

「これからは“地方発の時代”だ。だからこそ地場経済の動脈である地方銀行は、その経営基盤は揺るぎないものでなければならない。金融庁は本気だ」

 ある金融庁幹部は、金融庁主導による地銀再編の動きについてこう話す。そもそも地銀再編の話は、これまでの過去にも幾度となく出ては消えてきたものだ。

 だが、今年1月、金融庁と全国の地銀頭取との意見交換会の席上、「経営統合も重要な選択肢」との畑中龍太郎金融庁長官の異例の発言から地銀再編の論議が再燃化した。

金融庁「地銀というビジネスモデルはもう成立しない」

 今回の地銀再編論議の再燃化は、銀行業界、とりわけ地銀の多くは「重く受け止めている」(関西の地銀幹部)としながらも、「好景気に沸く、このタイミングでの経営統合論議の蒸し返しには納得がいかない」(前出・同)という声も多々聞こえてくる。

 アベノミクス効果による好況で、今、銀行業界はどこも好決算だ。にもかかわらず、なぜこのタイミングで地銀再編なのか。

「好景気の今だからこそ、だ。もし、不況期なら、かつての銀行再編のように業績不振で経営が苦境に陥っている下位行が上位行に吸収合併される選択肢しかなくなってしまう」(前出・金融庁幹部)

 金融庁は今夏、地銀というビジネスモデルは「成立しなくなる可能性がある」とのレポートを発表した。予想される人口減から、将来、地銀貸出残高が低下。同庁の試算では、2025年には2012年度比で20%減少する県もあるとしている。同時に、地銀の地場を軸とした中小企業融資の実態の検証結果も報告。全国地銀106行のうち約30行が実質収支はマイナスだったと指摘した。

金融庁幹部「地銀再編は待ったなし」!

 とはいえ、現在、市場環境の良さから、個人向けフリーローンや住宅ローン商品、地方公共団体や大手企業への融資も伸びている。しかし低金利のため、2014年3月期全体でみれば地銀貸出金利は4年前と比べ0.46%低下しているという。

 メガバンクと違い、新たなる貸出先を海外に求めることもできず、さりとて国内市場は飽和状、先行き予測される人口減と、地銀を取り巻く環境は、今後、ますます厳しくなる。

「我々に言わせれば、もう“待ったなし”だ。そもそも日本には銀行が多すぎる。地銀の社会的使命を否定はしない。だが、地銀がこれからもその社会的使命をはたすつもりなら、より健全な経営基盤を求めるのは当然のことではないか」(同)

関西地銀では、みなと銀行と但馬銀行の合併も?

 では、具体的に金融庁ではどういった地銀再編のビジョンを描いているのだろうか。ある金融庁幹部は、「あくまでも私見」と前置きした上でこう話す。

「例えば、関西なら、みなと銀行と但馬銀行が経営統合すると、兵庫県におけるリージョナルバンクとしての役割を今以上にはたせるのではないか。特に但馬銀行がカバーする兵庫県でも日本海側はこれから先行き人口減が著しい。みなと銀行の地盤である神戸市内にも支店を出しているが、やはりここはみなと銀行のテリトリー。無理がある」

 みなと銀行、但馬銀行、共に三井住友銀行が主要株主だ。主要株主である三井住友銀行がその気になれば、みなと、但馬両行の合併劇は一気に加速するかもしれない。

「兵庫県唯一の第一地銀といっても、同族経営が続く但馬銀行への風当たりもある。行内でもそうした話題(みなと、但馬両行の合併)が時折出ることは否定しない」(三井住友銀行幹部)

 もし、みなと、但馬の両行が合併したならば、メガバンク・三井住友銀行が後ろ盾の経営基盤が安定したリージョナルバンクが登場することになる。金融庁の思惑通り事が運ぶか否か。今後の動きに注目したい。

(文・写真/秋山謙一郎)

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