香港デモに各国メディア殺到…取材熱心なのはあの金満国だった

各国のメディアの野営テント(写真右下)。日本はなし!?

欧米より熱心だったアル・ジャジーラの驚くべき取材力

 中国政府の支配力強化に、若者たちが「NO!」を突きつけた今回の香港民主化デモ。一国二制度の矛盾が浮き彫りとなったこの事件は世界中からの関心が高く、デモ現場には各国から大勢のメディアが取材に訪れている。

 デモの中心地のひとつ、金鐘(アドミラルティ)の香港立法会付近には、香港のTV局各社はもとより、米CNN、仏TV5MONDE、韓国のMBS、シンガポールのCNAなどのテレビクルーが作業兼仮眠用テントを張り、文字通りデモ隊と文字通り寝食を共にしての取材を続けていた。

 なかでも最も精力的に取材をしていたのがカタールの衛星テレビ局、Al Jazeera(アル・ジャジーラ)だ。彼らは金鐘に2つのテントを張っていたほか、デモ隊が占拠していたコンノート・ロード(干諾道)にかかる歩道橋の、最も見晴らしの良い場所を中継スポットとして確保していた。さらに路上で座り込みを続けるデモ参加者にも盛んにマイクを向けては、「中国共産党をどう思うか」「デモに参加していることについて両親はなんて言っているか」といった質問をぶつけていた。とくにデモの学生リーダーの1人、黄之鋒(ジョシュア・ウォン)を執拗に追い回してはインタビューを行っていたのも印象的だった。

 テント内で映像編集作業をしていた同局の男性スタッフによると、彼らはデモの規模が拡大した10月1日から野営を組み、別のスタッフと交代でホテル泊とテント泊を繰り返しているという。彼は「政府がいつ強制排除に向かうかもしれない。その瞬間まで、ここで取材を続けることになるだろう」と話した。「アラブの春」でも他の追随を許さなかった同局の取材力は、香港でも遺憾なく発揮されていたのだった。

日本のTV局は情報統制された中国メディアと同レベル

 そんななか、お目にかかることがなかったのは、日本と中国のテレビ局だ。

 今回のデモに関し、中国国内では、香港の運輸業会団体によるカウンターデモや、デモに反対する香港市民の姿をニュース番組で繰り返し放映していた。デモの実態を人民に知られたくない当局によって情報統制されている中国では、無理からぬはなしであろう。

 しかし、日本のテレビ局の無関心ぶりはどういうわけか。短時間の中継や取材は行われていたのであろうが、密着取材を続ける各国のテレビ局の取材ぶりと比べると、その差はあまりにも歴然としている。韓国でさえ、デモ中心部にブースを設けているにもかかわらずだ。ネット上では、今秋APECで予定されている安倍首相と習近平国家主席の初となる首脳会談を控えた、”情報統制”だという陰謀めいた声も聞こえてくる。

 国内においても、なぜか日本のマスコミは反原発デモをはじめ、国民の団体行動が大きく取り上げられることは稀だ。言論の自由を保証されながら、結果、報道内容が統制下の中国のマスコミと同レベルとは皮肉なものである。

(取材・文・撮影/奥窪優木)

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