イスラム国志願・北大生騒動は"トンデモ茶番劇"だった

Photo by European Commission DG via filkr

 警視庁公安部が、イスラム教スンニ派過激派組織「イスラム国」に加わるために海外渡航を企てたとして、北海道大の男子学生(26・休学中)を事情聴取した事件は、単なる茶番劇で終わりそうだ。

 事件発覚直後の報道では、問題の学生が「テロリスト予備軍」であるかのような報道が相次いだが、その素性が明らかになるにつれて雲行きは怪しくなってきた。

 大手紙の社会部記者は、

「今回の事件が弾ける前、公安は大張り切りでした。ある幹部は、『第2のオウム事件になる可能性がある』と深刻ぶって話していた。逮捕後も興奮冷めやらない様子で『テロの芽を事前に摘んだ』と自画自賛してました」

 と振り返る。

忍者Tシャツを披露し「現地人に喜ばれる」と吹聴

 ところが、事件の概要が明らかになると、捜査員たちは一気にトーンダウン。捜査当局が危険分子とみなした学生が、単なる〝痛いモラトリアム青年〟だったことが判明してきたからだ。

 そのトホホな内幕は、「フライデー」(講談社)10月24日号でも報じられている。学生に取材したジャーナリストの常岡浩介氏(45)を直撃し、お騒がせ学生の素顔を暴いている。

 同誌によると、常岡氏とのインタビューに臨んだ学生が、忍者の絵柄が書かれたTシャツを披露し、

「日本人が忍者のTシャツを着てるって現地人に喜ばれるよ」

 と無邪気にハシャいでいたという。

「当該学生はツイッターもやっているのですが、その内容もひどい。精神障害者を揶揄するようなアカウント名を名乗り、『もうすぐ死ぬのでお勧めの風俗に連れて行って下さい』『死にたいにゃん』などと冗談とも本気ともつかない意味不明な書き込みを連発していた。自意識過剰な若者という印象でしたね」(先の新聞記者)

 本気でシリアに行く気などなかったのではないか。常岡氏はシリア渡航前の学生の行動にも疑問を呈している。

「常岡氏によると、学生は8月に一度シリア行きを中止しているが、その時は『パスポートが盗まれた』といって自分で警察に通報したそうです。シリア行きを仲介したイスラム法学者の元大学教授を呼び捨てにしてバカにするそぶりも見せていた。警察は学生の悪ふざけに振り回されてしまった可能性が高い」(同前)

それでも強がらずにはいられない公安幹部

 今回の一件で学生のみならず、常岡氏も自宅の家宅捜索を受けて取材道具を没収される憂き目に遭っている。警視庁公安部といえば、2010年10月に今回の事件とも関連するイスラム過激派を取り締まるための国際テロに関する捜査資料を大量に流出させた〝前科〟もある。今回の件でも、その拙速な対応に批判も集まっているが、それでも記者クラブ所属の〝御用記者〟たちに、幹部連中はこう吹聴しているという。

「よほどバツが悪かったのか、『常岡の言うことはあまり信用しないほうがいい』と言い含み、『今後も第2、第3のテロリスト予備軍が出てきかねない』と危機感を盛んに煽っている。でも、資料流出の時にも大した情報を集められていなかったことが露呈しており、本当に実情を把握できているとはとても思えない」(公安担当の社会部記者)

 バカ学生の1人芝居に踊らされた警察と、カラ騒ぎにまんまと乗っかったマスコミ。どっちもどっちということか……。

(取材・文/浅間三蔵)

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