『X-MEN』シリーズの監督に「少年性的虐待疑惑」が浮上

17歳の少年に対する性的虐待疑惑が……

 日本で5月に公開された『X-MEN:フューチャー&パスト』だが、本作の公開前から次回作『X-Men: Apocalypse(X-MEN:アポカリプス)』の製作がすでに決定していたようだ。マーベル映画お約束のエンドロールの後のフッテージでも、世界最古のミュータントのひとりであるアポカリプスの姿をチラ見せさせしていた。現在、同作品の監督ブライアン・シンガーも、Twitterのバナーにその姿が写った画像を使用している。

 しかし、『X-MEN:アポカリプス』の監督が公式に発表されたのは、『X-MEN:フューチャー&パスト』公開からかなり時間が経った9月23日だった。ブライアン・シンガー監督が続投することになったわけだが、彼自身もかねてから「続投する」と発言していた。では、公式発表がなぜこんなに遅れたのか? 実はそれには理由があった。ゲイであることをカミングアウトしているシンガー監督が、未成年男性への性的虐待で訴えられていたからだ。

 とはいえ、この訴えはかなり眉唾ものだ。31歳の男性、マイケル・F・イーガン3世と名乗る男性が「90年代後半、私が17歳でモデル兼俳優の卵だった時代、シンガーから性的虐待を受けた」と証言したのだ。そして訴訟を起こした時期が、『フィーチャー&パスト』の全米公開直前で、15年近くも経っていたことから、シンガー監督側の弁護士は「新作映画公開のタイミングを利用した売名行為」と非難したのだ。もちろん、シンガー監督側は無実を主張した。

訴訟沙汰でメディア露出をすべてキャンセル

 だが、この裁判がシンガー監督に与えた影響は大きかった。彼は騒動が新作映画に悪影響を与えるのを避けるため、プロモーション活動をすべて自粛するという声明文を発表。参加予定だったコミック系イベントに出席せず、取材の場にも一切登場しなかったのだ。

 シンガー監督は、シリーズ第1作『X-メン』(2000年)と第2作『X-MEN2』(2003年)を監督し、今回10年ぶりに本シリーズを監督することになった。彼はメディアに顔を出すのが大好きだし、話したいことはがたくさんあったはずだ。たとえば訴訟前の2014年3月、イギリスの映画雑誌『エンパイア』が25周年記念号として、『X-MEN:フューチャー&パスト』の全登場キャラが出演する25通りの表紙をつくったが、うちひとつはシンガー監督が表紙に收まった(写真参照)。ミュータントじゃないのに(笑)。そんな露出好きの監督にとって、取材にまったく参加できなかったのは、かなりつらい体験だったはずだ。

 一方、訴訟は今夏に進展を見せた。8月27日にイーガンが訴訟を取り下げたのだ。理由は「担当してくれる弁護士が見つからなかったから」というバカげた理由だった。これを受け、一時中断されていたシンガー監督と20世紀FOXの契約交渉は再会され、めでたく正式発表となったのだ。今回の悔しさの反動で、シンガー監督はこの新作のプロモーションに、これまで以上に積極的になってくれるに違いない。新作『X-MEN:アポカリプス』は2016年5月27に全米公開予定だ。

平沢 薫(ひらさわかおる)
映画ライター。視覚に訴えかけるビジュアルの派手な映画がお気に入り。『映画.com』『シネマトゥデイ』『SCREEN』『キネマ旬報』『フランケンウィーニー』ノベライズなど。「『スター・ウォーズ』まとめ」でエピソード7のニュースも追いかけ中。
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