【マネー】『モンスターストライク』で注目浴びるmixi株の可能性

 株式市場では、毎年のように「スター株」が誕生する。この「スター株」に明確な定義はないが、その年の株式市場の花形として広く人気を集めた銘柄のことを指す。今年のスター株はなんと言っても『モンスターストライク』がメガヒットしたミクシィ(マザーズ・2121)だろう。ミクシィは、現在のフェイスブックやツイッターといったSNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)の先駆けとして、2006年にマザーズに上場。ミクシィは新しいスタイルのコミニュケーションツールとして若者の間で人気を呼び、同社も急成長を遂げた。

 しかし、その後はほかのSNSツールとの競争によって収益柱だったサイトの広告収入が激減。営業利益は、2009年3月期の37億7100万円から、前期の2014年3月期には4億8000万円まで減り、最終損益は赤字に転落した。株価も、2007年12月の高値から、2013年10月には約20分の1にまで暴落している。

『モンスターストライク』のヒットによって状況は一変

 ところが、スマホゲームの『モンスターストライク(モンスト)』のヒットによって状況は一変する。2013年9月に販売が開始された『モンスト』は、同年末早々に100万ダウンロードを突破。2014年7月には1000万ダウンロード、10月上旬には1400万ダウンロード達成と、メガヒットゲームに成り上がった。

 業績も絶好調で、8月8日の2015年3月期の第1四半期決算では、売上高127億円、営業利益46億円、純利益29億円と、わずか1四半期だけで2009年3月期に記録した過去最高益の19億円を更新。同社は通期の業績見通しを公表していないが、経常利益についてはアナリストのコンセンサス予想の平均値が340億円程度なので、最終利益も200億円前後ということになりそうだ。この短期間にわたる急成長を背景に、株価は2013年11月から約9カ月で30倍超に大化けした。

『パズル&ドラゴンズ』のガンホーはいまだ底値のまま

 この話を聞いて、2013年のガンホー・オンライン・エンターテイメント(3765)のケースを思い出した投資家も多いのではないか。ガンホーもスマホゲーム『パズル&ドラゴンズ』のメガヒットによって株価が半年で50倍超に暴騰した2013年のスター株である。もっとも、その後は成長スピードの鈍化が嫌気され、株価はピークの3分の1以下に下落した。

 注目したいのは、ガンホーの業績が決して後退しているわけではないこと。同社も業績予想は非公表だが、今年7月の中間決算では、売上高が26.4%増、営業利益は19.1%増、最終利益は13.9%増と、過去最高ペースを維持。むしろ好決算と言える内容となっている。『会社四季報』予想ベースのPERでは8倍割れ。もし、これが日経225に採用されるような大型株であれば、機関投資家はもろ手を上げて買い出動するところだ。しかし、株価は右肩下がり。いまだ底値を模索中なのである。

 これは、マザーズやジャスダック上場の新興株に関して、株価を形成する要素として最も重要なものが「業績の変化率」であることを如実にあらわしていると言えよう。

第2四半期の内容次第では再び上昇する!?

 さて、ミクシィに話を戻そう。『モンスト』は、現在も順調にダウンロード数を伸ばしている模様で、ミクシィはSNSサイトの運営会社から完全にスマホゲーム会社へと生まれ変わった。

 ポイントは、11月7日に予定している第2四半期の決算発表。すでに高成長は既定路線だが、はたしてどれだけ収益を伸ばしてくるか。9月に入って物色の中心が円安を背景にした輸出関連株にシフトしていたが、足元の平均株価の調整によって、再び新興市場に買いが流れる公算が出てきた。

 ミクシィの株価は、現在も8月のピーク値に近い水準を維持している。13週移動平均線に支えられる形でなんとか踏ん張っており、チャート上でも上昇トレンドは崩れていない。それだけに、第2四半期の内容次第では再び株価が上放れしてくる可能性は十分あるだろう。ただ、気になるのは最近やたらテレビで『モンスト』のCMを目にすること。広告費の増加を上回るほどの成長が達成できれば問題はないが、これによって少しでも収益成長のペースが鈍化すれば、株価が高値圏を維持しているだけに、ガンホーの二の舞となる公算が大きいのも事実。

 いずれにしても、今後の株価の浮沈はミクシィの成長率にかかっていることだけは確かだ。

※投資にあたってのあらゆる意思決定、最終判断、実際の売買はご自身の責任において行われますようお願いいたします。投資による損失について、本サイトおよび著者は一切、責任を負いません。

新井奈央(あらいなお)
マネーライター。株式評論家・山本伸のアシスタントを務め、株や経済を勉強。その後フリーライターとして活動し、株や為替などを中心に投資全般の執筆を手掛ける。マネー専門のライターとして雑誌や書籍などの執筆で活躍中。そのかたわら、銘柄の紹介にも携わり、夕刊フジの月間株レース「株−1グランプリ」では、出場3度のうち2度、月間チャンピオンの座についている。
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