【松島みどり法相・辞任】「うちわ問題」は法務官僚のリークか

傍若無人すぎる態度であだ名は「小マキコ」

 議員宿舎問題、「雑音」発言問題、うちわ配布問題……数々のスキャンダルに揺れる松島みどり法相が、10月17日午後、民主党により東京地検に刑事告発された。自らの選挙区で「うちわ」を配布したと指摘されている問題で、有価物(価値ある品物)の配布を禁じた公職選挙法に違反しているとして追及が続いている。

「女性が権力を持つと国が乱れる」というのが古今東西を問わず歴史の教訓だ。にもかかわらず安倍総理は「女性が輝く社会の実現」を内閣最重要課題のひとつに掲げ、先の内閣改造では5人もの女性閣僚を誕生させた。女性の能力を活用するのはまことに結構なのだが、残念ながらこれが就任早々、揃いも揃って醜聞が噴出。その筆頭が、赤い服がトレードマークの「レッド松島」こと松島みどり法相である。

 筆者も現職秘書時代に自民党の政務調査会の部会などで何度かお見かけしたことがあるが、松島は生来、エキセントリックな性格で些細なことで喚き散らす。おまけに声が大きく、かつて外務省を機能不全に陥れて「史上最悪の外務大臣」とまで言われた田中眞紀子に風貌が似ていることから「小マキコ」などと陰口を叩かれる、困ったオバサンだ。

 東大出であることを鼻にかけ、自信過剰で、答弁も官僚が作ったペーパーに頼らずに自己流でやろうとするから、「何を言い出すかわからない。いずれは舌禍でしくじる」というのが永田町でのもっぱらの観測だった。

大臣就任当日から法務官僚を敵に回す

 そんな松島だから、就任当日にはさっそく悶着を引き起こした。法務大臣がどれほど偉いのか知らないが、大臣就任後の法務省での記者会見を「出迎えの職員が少ない」と腹を立てて議員会館に戻ってしまい、会見時間を遅らせてしまっている。

 それだけではない。「谷垣(前法相)のお下がりの大臣専用車が気に入らない」と駄々をこねて新しい車を用意させたり、「書類の文字が小さすぎる」と役人たちを叱責したり、自分の新しい名刺を見て「字が小さすぎる!」と刷り直しを命じたり、大臣室に出入りする法務省職員たちにまるで幼稚園児のように「名札」をつけさせたり、「スケジュールの管理は自分でやる」と言い出したりと、まさにやりたい放題だ。松島の専横に頭を抱えた法務省の幹部が「大臣を何とかしてくれ」と官邸や自民党本部に駆け込むも、松島には馬耳東風。一向に態度を改める気配はないらしい。

さらなる「松島下ろし工作」が展開の可能性も

 何より問題なのは、冒頭でも触れたが、10月7日の参議院予算委員会で民主党の蓮舫議員が取り上げた公職選挙法の寄付の禁止規定違反疑惑だろう。公選法は、自分の選挙区内での「有価物」の配布を刑罰をもって禁止している。松島は「うちわとしても使えるが、あくまでも討議資料だった」などと苦しい言い訳をしているが、もし「有価物」と認定されれば、法律違反を問われかねない。

 不思議なのは、たいして調査能力のないはずの蓮舫議員がその事実をどうやってキャッチしたのかだが、あるいは「松島を何とかしなければ」と考えた法務官僚たちの巧妙な工作があったのではないかと思われる。つまり、法務官僚が蓮舫周辺の番記者などを通じて、松島の過去の疑惑情報を意図的に民主党側へリークしたのではないか。

 法務省は外局として、捜査機関の検察庁を傘下に置き、しかも次官をはじめ局長、重要な課の課長はすべて「検事」だ。彼らはプライドも高く、その権力は、陰湿なリーク工作で田中眞紀子を更迭に追い込んだ外務官僚の比ではない。敵に回してこれほど怖い組織はなく、もし松島がこれからも不遜な態度を改めず役人苛めを続ければ、業を煮やした法務・検察官僚たちがその捜査能力をフル活動させて松島の近辺を嗅ぎ回り、違法行為を暴いて「潰し」にかかるだろう。 

 いずれにせよ、法務官僚たちを甘く見た松島の無謀さが裏目に出て、田中眞紀子の二の舞いにならなければよいのだが……。

文・朝倉秀雄(あさくらひでお)
ノンフィクション作家。元国会議員秘書。中央大学法学部卒業後、中央大学白門会司法会計研究所室員を経て国会議員政策秘書。衆参8名の国会議員を補佐し、資金管理団体の会計責任者として政治献金の管理にも携わる。著書に『国会議員とカネ』(宝島社)、『国会議員裏物語』『戦後総理の査定ファイル』(ともに彩図社)など。
ピックアップ PR 
ランキング
総合
社会