製薬業界の闇を内部告発「子供用風邪薬にダニの死骸を混入している」

 中国の毒入り餃子、たばこの吸い殻入り紅茶など、世間をにぎわせた異物混入騒動。それは、なにも食品に限ったことではなかった。病院で処方される処方箋薬でも同様の事態が起こっていたのだ。

 問題となっているのは、Aという製薬会社の商品。明治創業の老舗で、売り上げは年間200億円ほどの中規模の製薬会社だ。心臓病薬や胃腸薬なども作っているが、今回問題視されているのは、こども用の風邪薬だ。

 その薬の製造ラインで働いていた派遣社員が、ずさんな製造現場の実態を明かす。

「当社で作られたこども用風邪薬には、ダニの死骸や髪の毛、何かわからない黒い粒が入ったまま市場に出回っている。僕は50キロほどの樽に入っている粉末薬を、小さなボトルに小分けしていくラインで働いていました。以前は異物が1つでも入っていれば、樽ごと全て破棄するというルールで製造されていた。ところが、経営が悪化してそのルールが徹底されないようになっていった。2013年4月頃に体制が変わると、異物を目視しても料理で使われるようなあみの濾し器で濾すか、スコップですくって捨てるだけ。同じ樽の中に残った薬は、その異物に触れて汚染されたままパック詰め。それらは市場に出回って、こどもたちの口に入っています」

50キロ中に98個もの異物と“ダニの死骸”

 ある日の光景を、Cさんは今でも忘れられない。

1樽の上澄みの部分だけで5個もの異物が確認できたので、

「いったん、作業を止めよう」

 とラインを止めて検査した。すると、樽の中からなんと98個もの異物が出てきた。

 翌日、検査係の同僚に見せられた拡大写真を見てビックリ。

「黄土色のダニの死骸がくっきりと映し出されていたんです」(派遣社員)

 この事態に対して会社がとった態度は、予想したものではなかった。上司が下した決断は、

「あの薬はこのまま製造するから」

 というもの。

「耳を疑いました。ダニの死骸が混入していた粉末をざるで濾して納品するというのです。『そんなものを出してもいいんですか!?』とみんなで止めたのに、『上からの指示だから』と、揉み消すと言われたのです」(前出の派遣社員)

「ダニの死骸がアレルギーを誘発する」

 この事態をどう見るべきなのか。医学的な見解を、内科医に聞いた。

「種類にはよりますが、ダニがこどもの口に入ってしまった場合、アレルギー症状が出ることもある。ふるいにかけるだけなら本当にすべてのダニが取り切れているのかも疑問です」

 またA社とは別の同業他社の社員は、「業界的にもひどい例に相当する」と前置きしてこう語る。

「例えば混入する異物が髪の毛なら、人為的ミスだしどこの工場でも起きうる話。ですが、ダニが検出されているのであれば、その工場は医薬品を作ってはいけないレベル。すぐにでも工場を閉鎖して清掃すべきですね」

 異物混入についてB社に取材をすると、

「厳しく調査致しましたが、そのような事実はございませんでした。間違いなのでは」

 という返答が広報部から寄せられた。

 一方、情報を寄せてくれた派遣社員はこう語る。

「工場内は衛生面が行き届いているとは到底言いがたく、そのへんに蜘蛛がいるような環境です。会社がシラを切るならば、厚労省に話をしに行こうかと思います」

 医薬品製造の現場でもまた、衛生問題は問われてしかるべきもの。今後も動きを追っていきたい。

(取材・文/大伯飛鳥)

ピックアップ PR 
ランキング
総合
社会