10月18日、『ミレニアムズ』(フジテレビ)が始まった。この番組、オードリー、ウーマンラッシュアワー、ナイツ、流れ星、山里亮太という5組の芸人がレギュラー出演するということもあり、始まる前からお笑いファンのあいだでは注目度が高かった。彼らには2000年デビューという共通点があり、そこから番組名も『ミレニアムズ』となった。この世代の芸人が集まって1つの番組を任されるというのは本当に珍しい。「どこが珍しいの?」と不思議に思われる方もいるかもしれない。確かに、このメンバー、それぞれではテレビにも多く出ている売れっ子ばかりだ。ただ、彼らのような同世代の芸人だけがこういう形で集められて番組を仕切るのは、めったにないことなのだ。
例えば、『アメトーーク!』や『ロンドンハーツ』のような芸人がたくさん出ている、ひな壇系バラエティ番組の布陣を想像してみてほしい。そこで司会進行を務めたり、ひな壇の中心で活躍しているのは、40歳前後の中堅芸人ばかりだ。具体名を挙げるなら、田村淳、有吉弘行、後藤輝基、山崎弘也、雨上がり決死隊、千原ジュニア、土田晃之といった面々。質・量ともに充実しているこの世代は、お笑い界の「黄金世代」と言っていい。
もちろん、ミレニアムズ世代の芸人もそういった番組に出ることはあるが、あくまでも少数派にとどまることが多い。多数派を占めるのは、彼らより少し上の世代の芸人たちだ。実際、最近になってMCとして順調に仕事を増やしている有吉弘行、後藤輝基、バナナマン、おぎやはぎといった顔ぶれは、いずれも「黄金世代」の人々。ミレニアムズ世代でもMCを務めている人はいるが、まだその地位を確立したとは言えない状況にある。いわば、現在のテレビお笑い界では、黄金世代とミレニアムズ世代の間に深い溝があるのだ。その溝を超えてさえいれば、司会者芸人として堂々と自分の番組を持てるようになる可能性もある。だが、下の世代にいる場合、そこからはい上がるのはかなり困難な状況にあるのだ。
『ミレニアムズ』は画期的な実験番組
そこにどういう溝があるのか? 黄金世代とミレニアムズ世代で何が違うのか? その点について、ミレニアムズ世代の山里が自ら語っていたことがある。4月30日放送の『ナカイの窓』(日本テレビ)で、「山里世代SP」という企画が行われた。山里を含む1970年代後半に生まれた芸人やタレントが集められ、子供の頃に流行ったものを振り返ったりして、同世代だけに通じる思い出話を繰り広げるという内容。
ここで、先輩芸人と比較して、山里世代の芸人はガツガツしていないのはなぜなのか、という話題になった。山里は、上の世代の芸人に対して抱えているコンプレックスを語り始めた。自分たちの世代には「たとえ何をやっても上の世代にはかなわない」というあきらめがある、と。そして、山里はミレニアムズ世代の弱点をズバリ語った。
「僕らの世代は全員、小器用でしかないんです」と。
また、同じ番組内で、若林もテレビ局のディレクターと話したときのエピソードを語った。どんな番組がやりたいかと聞かれて、同世代の芸人が集まる番組をやりたい、と答えたところ、ディレクターにこう返されたというのだ。
「(若林世代の芸人は)強烈に引っ張っていく奴がいないから、(視聴者に)見る理由が生まれない」
これはまさに、なぜミレニアムズ世代の芸人が集まる番組が、いままで存在しなかったのかということに関する、テレビを作る側からの模範解答だ。見る理由が生まれないというのは、そのまま「数字が取れない」ということにつながる。
ミレニアムズ世代は、上の世代に対する強烈な「憧れ」と、彼らにはかなわないという「あきらめ」を同時に抱えている。だからこそ、彼らの多くは器用ではあるが、いざというときの爆発力や突破力に欠けるため、大きなプロジェクトを任されるチャンスがなかなかめぐってこないのだ。
『ミレニアムズ』という番組のレギュラー陣がいかに画期的であるか、お分かりいただけただろうか。いわば、これは、バラエティの枠を使った1つの実験なのだ。ミレニアムズ世代の芸人だけの番組が、世間に通用するのかどうか? この世代の芸人の運命は、この番組が握っていると言っても過言ではない。
- ラリー遠田
- 東京大学文学部卒業。編集・ライター、お笑い評論家として多方面で活動。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務める。主な著書に『バカだと思われないための文章術』(学研)、『この芸人を見よ!1・2』(サイゾー)、『M-1戦国史』(メディアファクトリー新書)がある