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プロ野球人事、デーブ大久保と古田敦也を巡るオヤジたちの攻防|プチ鹿島コラム



 この時期のオヤジジャーナルはプロ野球の「人事」で盛り上がる。最近もっとも注目された人事が「楽天・大久保博元新監督」だった。通称デーブ大久保はファンから就任反対運動が起きるほど不評だったのである。

 10月9日発売の「週刊文春」は《デーブ大久保に学ぶ人望がなくても出世する方法》といきなり。そもそも大久保が不人気のワケは「西武コーチ時代の2008年に知人女性への暴力行為で書類送検され、10年には菊池雄星投手への暴行を理由に球団を解雇された“問題児”」だからと文春は説明する。

 しかし文春は「デーブは昔から有力者に取り入るのが上手い。球界のOBに対して『オヤジ』『アニキ』と呼んで慕うなど、秀吉タイプの人たらしなんです」と関係者のコメントを紹介する。それだけではない。楽天オーナーの三木谷氏は「長男がデーブ主宰の野球教室に通っていることをきっかけに、大のお気に入りとなった」というのだ。これがホントならデーブは「今太閤」と呼んでもよい立身出世ではないか。叩き上げではないか。

 そしてこの秋、楽天監督を星野仙一が退任した。今後はGMに就任するという、文春は後任として「大久保が内定」したと伝える。

 ところが東スポは《デーブ監督白紙のウラ》と文春発売前日に書いていたのだ。実は東スポはデーブ大久保の天敵でここ数年の大久保ネタを徹底して追い続けている。東スポはデーブ白紙の理由として三木谷オーナーに、「迷い」が見え隠れしていると書く。
《球団幹部によれば大久保二軍監督の就任が濃厚と報じられてから、球団や本社に問い合わせが殺到。さらに年間シートやファンクラブなど営業面にも支障が出ているという。つまりは「大久保監督」に対するファンの反発が、三木谷オーナーの予想以上だったということ。》(10月8日)

 実際このあとしばらく楽天からは新監督の発表がなかった。しかし遂に10月14日に大久保監督の就任が発表される。東スポは翌日の一面で《デーブ反対派敗因》と見出しをうち、その理由として、“反デーブ派”のひとりである立花社長は「新たな監督候補を擁立しようと東奔西走していた」が、三木谷オーナーを納得させられるだけの対立候補を用意できなかったと報じた。

 ここらへんの事情、妙に生々しかったのが10月17日発売の「フライデー」である。《パワハラ大魔王の監督就任で涙目の人々》という記事で、三木谷氏がデーブ以外にこだわった別の人物がいたと書く。その男とは「古田敦也」。デーブ就任発表の直前まで古田との交渉は続けられたという。

 しかし、《古田はソフトバンクやDeNAにも自身を売り込んでいて、クビを縦に振りません。古田が明確な返事をしなければ、デーブに打診することもできない。(スポーツ紙担当者)》という状況だったとフライデーは書く。

 こうして監督決定が難航し、星野仙一は「ここまで引っ張ったら、選手も次の監督も混乱する。こんな状況でGMなど受けられない」と怒ったのだという。《あわてたオーナーは、発表当日(14日)の朝になってデーブに連絡した》。これがフライデーによる報道内容だった。

 実は楽天と古田のつながりはこれまでも各所で度々報じられていた。東スポは星野退任が発表されるやいなや「後任古田監督」(9月20日付)とデカデカと報じている。

 しかしフライデーの記事どおりでいくと、古田は3球団を天秤にかけているうちに結局どこの監督にもなれなかったことになる。古田がすんなり楽天に決めていれば大久保監督の目は無かったのかもしれない。これが各紙(誌)読み比べをして行間からうかがえる「想像」だ。

 それにしても注目は来年の大久保監督である。もし名将になっちゃったら、それはそれでちょっと痛快なのだが。

著者プロフィール

お笑い芸人(オフィス北野所属)

プチ鹿島

時事ネタと見立てを得意とするお笑い芸人。「東京ポッド許可局」、「荒川強啓ディ・キャッチ!」(ともにTBSラジオ)、「キックス」(YBSラジオ)、「午後まり」(NHKラジオ第一)出演中。近著に「教養としてのプロレス」(双葉新書)。

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