梅毒&エイズが急増…「安い風俗で感染」と女医が警鐘

身に覚えのある方は一度検査した方がいいかも…

 梅毒やエイズなどの性感染症が国内で急増中だ。国立感染症研究所の発表によると、2013年の梅毒の患者数は1226人(速報値)で、現行の統計法が採られた00年以降で初めて1000人を超えた。11年は621人、12年は875人と3年連続で大幅な増加を続けている。

 また、13年のエイズ患者が過去最多に上ったことも明らかになっている。感染に気づかないままエイズを発症する、いわゆる「いきなりエイズ」を含めて新規患者は484人、以前の感染者との合計は1590人、さらに発症していないエイズウイルス(HIV)感染者も1106人を数える。

 こうした性感染症が今後も増加する可能性を否定できないというのが、多くの関係者の見方だ。性感染症増加の背景を探ってみた。

最後には脳細胞も破壊

「梅毒やエイズだけではありません。全体的に性感染症は増加傾向にあります」

 そう言い切るのは、風俗嬢の性感染症に詳しい川崎みな子医師(仮名)だ。

「ただし、自覚症状がないか、あるいは軽い場合には医師の診療を受けない方も多いので、正確な数値は把握できません。梅毒やエイズなどの性病は感染症法による全例報告義務があり、診断した医師が届け出ます。逆に言えば国立感染症研究所が把握しているデータは、医師が診断した例だけということです。実際にはもっと多いはずです」

 たとえば、日本国内で最も蔓延しているといわれる性器クラミジアは、ほとんど自覚症状がないが、「潜在感染者」は100万人に上るという試算もある。クラミジアは、クラミジアトラコマティスという病原体により感染し、放置すると女性は不妊になる恐れもある。

「アナルセックスやオーラルセックスなどあらゆる性行為で感染するのは、いずれの性病も同じですが、梅毒の場合はさらに妊娠中の母親の胎内で感染し、出産後に感染が判明する『先天梅毒』もあります。13年だけでも4人の症例が報告されています」

 川崎医師は、このままでは梅毒のパンデミック(世界的大流行)の危険性もあると指摘する。

「梅毒は、かつては『死に至る病』と言われましたが、現在は治療法も進んでいるので、甘く見ている方が多いのだと思います。初期は自覚症状もほとんどなく、気づかないまま細菌をまき散らしている感染者が少なからず存在しているのです」

 梅毒は「トレポネーマ」という細菌の感染によって発症するが、この細菌は性行為によって粘膜や皮膚の小さな傷から体内に侵入する。感染者の血液を輸血したり、誤って血液にふれることからも感染するが、これらは他の性病と共通している。体内に侵入した菌はじわじわと全身をむしばみ、臓器や軟骨を侵していく。

「梅毒にかかると『鼻が欠ける』といいますが、それは鼻が軟骨でできているからです。もちろん鼻だけではなく全身にさまざまな症状が出ますよ」

 梅毒の症状は、第1期から第4期に分けられるが、この区分はあくまでも目安であり、急激に症状が悪化する場合もあるという。

 第1期(感染から3週間くらいまで)では、性器や乳房の周辺に数ミリ程度のしこりができるが、3カ月程度で消えるのでスルーする場合がほとんど。第2期はそれから3年くらいまでで、倦怠感や微熱、さらには発疹も出るが、痛みやかゆみがなく、放置すると消える。

「そこから10年までが第3期ですが、この時期には顔から内臓まで至る所に固いコブに似た腫瘤(しゅりゅう)ができ、体内の組織を破壊していきます。第4期の10年以上になると脳にまで細菌が入り、記憶障害など認知症のような症状が表れてきます。他にも、大動脈瘤(だいどうみゃくりゅう)や大動脈炎、歩行障害、さらには突然死も引き起こします」

中高年の感染者も急増

 エイズの増加も深刻だが、梅毒とエイズの「ダブル感染」もあるというから驚きだ。負の相乗効果があり、免疫力低下と内臓組織の破壊が進んでしまう。

「いずれの性病も、50代以上の中高年が増加していることがわかっています。これはバイアグラなど勃起不全治療薬の普及と派遣型風俗の発達によるものと考えられます。ソープの高級店などは定期的な検査を義務付けるなどそれなりの対策を取っていますが、安いフーゾクは感染リスクも高くなることを肝に銘じてください」

 こうした感染を防ぐにはどうすればいいのだろうか。

「コンドームでも100%は防げません。アナルセックスやオーラルセックスの時にコンドームを使うことに抵抗がある方がほとんどだからです。最も有効な性病対策は定期的な検査です。自覚症状が出ないうちに対応した方がいいので、身に覚えのある方はぜひ励行してください」

 ちなみに現在は結婚するカップルが一緒に検査を受けて結果を確認することも多いという。

「生まれてくる赤ちゃんのためにもカップル検査は不可欠。検査項目のセットメニューを作っている医療機関もあるので、チェックしてみてください」

 でも、結果次第では破談になるかも? それが怖い人は普段から“身ぎれい”にしておこう。

(取材・文/DMMニュース編集部)

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