[中国のヤバすぎる正体]

死体と結婚…中国で蔓延する「遺体窃盗ビジネス」の影に驚きの風習が

死体でもいいから結婚することが大事(イラスト/孫向文)

 こんにちは。中国人漫画家の孫向文です。今回は中国の風習にまつわる、ゾッとするような話をしたいと思います。

 10月30日、三東省にて死体を盗んでいた犯罪グループが逮捕されました。人間としての原形をとどめたままの新鮮な死体だと、高く売りさばくことができたことから、彼らは霊安室に忍び寄り、火葬される前の死体を盗み出していました。亡くなったばかりの死体だと、なんと、2万元(36万円)もの値が付いていたようです。

 いったい、何のために彼らは盗んだのか? 臓器売買? いえ、違います。実は、死体同士を結婚させるためでした。

 中国の農村部にはいまだに「冥婚」という風習が残っています。中国は家族主義です。子孫を繁栄させていくことが何よりも大事だという考えが根付いています。日本では最近、結婚しない男女が増えてきているようですが、中国だと、そんな身勝手な行為は許されません。この国で結婚しないことは罪なのです。いい年になっても独り身だったら、「ベトナムの嫁でもいいから買ってこい!」と家族に勧められることでしょう。

 子孫繁栄を至上とする教えは、迷信(墓場の風水学)を生みだしました。それは、息子や娘が結婚しないまま亡くなってしまうと、そこで家系図が途切れてしまい、親族一同に災いをもたらすというもの。こうしたことから、死者同士を結婚させる「冥婚」が生まれたわけです。

あの有名ドラマの題材にもなっている冥婚

 古くは、三国志の曹操の息子、曹沖も13歳の頃に亡くなったことから、曹操は、同じ頃に亡くなった女の子を息子と一緒に土葬し、「冥婚」させました。

 権力や金のある人だったら、親族で早死にした人がいれば、金によって死体を購入し、死者同士を結婚させます。とはいえ、そうそう都合よく、同じ年ごろの男女が亡くなるということもないでしょう。そういうときはどうするかというと、かつては、そのために殺されていたという恐ろしい逸話もありますが、生者を、死者と結婚させるのがポピュラーです。例えば、こういう話があります。

 とある警察署の長官の娘が、流れ弾に当たって亡くなりました。長官が部下たちを集め、「誰か自分の娘の旦那になるか?」と問いかけたところ、1人の不細工な男が立候補しました。長官は結婚式場を借りて、棺桶の中に入れた娘と、部下の結婚式を行います。そして、初夜──。

 部下は死体の娘と一緒に布団の中に入り、体を交わらせます。教官の娘は死しても美しくて、その部下は死者である妻の虜になりました。ですが、日に日に部下の頬はこけていき、その見た目がまるで死者のように変貌していきます。逆に警察長官の娘は、部下の生気を吸い取っていったのか、次第に人としての温かみを取り戻していったのでした。

 怖いですよね……。

 え、実話かって? いえいえ、実は、これは香港の有名ドラマ『キョンシー』(サブタイトルは『大頭緑衣闘疆屍』)の話でした(笑)。ただ、中国で長年伝えられていた逸話が元になっていて、半分は実話です。冥婚は中国全土で見られた儀式ですし、中には本当に死体と初夜を行った者もいることでしょう。

 家族の繁栄を大事にする中国。今後も死者の需要があることから、死体窃盗ビジネスが途絶えることはないでしょう。

著者プロフィール

漫画家

孫向文

中華人民共和国浙江省杭州出身、漢族の31歳。20代半ばで中国の漫画賞を受賞し、プロ漫画家に。その傍ら、独学で日本語を学び、日本の某漫画誌の新人賞も受賞する。近著に『中国のもっとヤバい正体』(大洋図書)

(構成/杉沢樹)

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