【ラリー遠田のお笑いジャーナル】
先日放送された『ナカイの窓』(日本テレビ)では、「イジられ芸能人」というテーマで、イジられることの多いタレントが集まってトークを展開していた。この日のゲストは、クリス松村、クロちゃん(安田大サーカス)、近藤春菜(ハリセンボン)、田中卓志(アンガールズ)、堤下敦(インパルス)。
確かに、バラエティ番組で彼らがイジられている場面はよく見かける。イジりには「変なあだ名で呼ばれる」「見た目を何かに例えられる」「ギャグなどを無茶ブリされる」「ちょっとした言動にツッコミをいれられる」などさまざまな形があり、それぞれに得意のパターンを持っている。
近藤の人気に火がついたきっかけとなったのは、ロンドンブーツ1号2号の田村淳に見た目を角野卓造に例えられて、「角野卓造じゃねえよ!」と返したことだという。その返しが面白いということで、それ以降、いろいろな人からさまざまなものに例えられて、それに「○○じゃねえよ!」と返していく、というパターンが確立されたのだ。
1つの型ができると、誰でもイジりやすい存在になる。アナウンサーやアイドルといった芸人以外の人でも、近藤に「角野卓造さんですよね」と話しかければそれだけで笑いが生まれる。これがイジられる人の強みだ。
なぜ“イジられ”芸人が笑いをとれるのか
最近、ある芸人から聞いたのが「今の時代、イジられキャラの芸人しか売れない」ということ。確かに、『アメトーーク!』『ロンドンハーツ』などの番組に出て、頭角を現している若手芸人と言えば、圧倒的にイジられキャラの人が多い。最近で言えば、パンサーの尾形貴弘、ジャングルポケットの斉藤慎二、三四郎の小宮浩信などがその代表だ。彼らは、自分1人の力でエピソードトークをしたり、他の誰かをイジって笑いを取ったりするタイプではない。だが、イジられる側に回ったときにはグッと面白くなる。
イジられる人が売れやすいのは、いまバラエティ番組を仕切っているMCやひな壇芸人の大多数が、40歳前後の中堅芸人だからだ。30歳前後の若手芸人がいきなりバラエティ番組に出たときには、そのような芸歴も実力も経験も自分たちより上の先輩たちに囲まれることになる。先輩芸人は、彼らの面白さを引き出そうとして、あの手この手で彼らをイジっていく。そこでうまく対応して笑いを取ることができた人だけが、チャンスをつかむことになる。
狩野英孝や出川哲朗は別次元
イジられるというと受け身のように見えるが、実はうまくイジられるには技術も必要だ。イジられて不快感を示したり、露骨に嫌がったりするような人は、イジられるのを笑いにするのが不得手な人だと見なされ、自然とイジられなくなってしまう。うまくイジられるためには、イジられることを心の底から受け入れて、その流れに身を任せる勇気が必要なのだ。
ただ、「イジられ」の道も、達人の領域まで行くと別の道が見えてくる。例えば、狩野英孝や出川哲朗は、イジられのプロ、リアクションのプロとして知られている。彼らのすごいところは、自分が意図していないところでリアクションが自然と面白くなってしまう、ということだ。彼らが普段話している内容や態度を見る限り、彼らは自分がイジられることをそれほど全面的に受け入れられてはいない。どちらかというとむしろプライドが高く、イジられるのは嫌だと思っている。ただ、その嫌がり方が絶妙に面白くなってしまうから、彼らの意に反して、彼らは一流のイジられ芸人と呼ばれる。これこそが才能というものだ。
芸人にはいろいろな種類の人がいる。イジられるのが得意な人もいれば、不得意な人もいる。イジられる才能がある人しかテレビに出られない時代なのだとすれば、そうではないタイプの若手芸人にとってはなかなか厳しい時代になってきているのかもしれない。
- ラリー遠田
- 東京大学文学部卒業。編集・ライター、お笑い評論家として多方面で活動。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務める。主な著書に『バカだと思われないための文章術』(学研)、『この芸人を見よ!1・2』(サイゾー)、『M-1戦国史』(メディアファクトリー新書)がある