2013年WBCでも活躍したグリエル。来シーズン、キューバの助っ人たちはどのチームに?

いかだで海を渡るのは想定の範囲内!? キューバ人の亡命と野球

 日米野球も終了して、オフモードに突入した日本プロ野球。今シーズンも振り返れば、印象深い出来事がたくさんあった。そのうちの1つが、キューバ人選手の日本球界への本格参入だろう。

 巨人入りしたセペダを皮切りに、DeNAへ入団したグリエル、7月末の補強期限ギリギリにロッテへ入団したデスパイネなど、大物助っ人たちが続々と来日。今シーズンのプロ野球を盛り上げてくれた。

 昨年の9月、これまで自国選手の海外移籍を認めなかったキューバ政府が、野球を含むスポーツ選手の国外プロ活動を認めると発表。新たな外貨獲得の手段として、代表クラスを世界へ派遣する方針を打ち出した。その影響で、キューバ国内でも超有名な大物選手が日本へやって来たのだ。

貧しい国だからこそ起こる悲劇

 この方針が発表される以前は、キューバ選手が正式なルートで、国外球団に入団することは夢のまた夢。なにしろ政府が認めていないのだから、国外移籍するにはキューバから亡命して、米国やメキシコなどの第三国で移住権を取得する必要があった。母国を裏切り、逃げ出すように海を渡るキューバ選手たちの“亡命秘話”には、ウソかホントか分からない、奇妙な物語がたくさんあるのだ。

 カリブ海に浮かぶ島々で形成されるキューバ共和国。その豊かな自然とは裏腹に、キューバは貧しい国だ。アメリカ政府の調査によると、キューバの労働者の平均月収は、わずか15ドル~20ドル程度。他国に行けば大金を稼げるスポーツ選手にとって、亡命することはある意味、必然的な流れだといえる。

 ところが、キューバ政府はそれを許さなかった。自国生まれの才能豊かな選手たちを他国に渡すことは、国にとって痛手になるからだ。青天井の大金が動く、プロスポーツビジネス界の「商品」でもある彼らを、他国へ輸出することは、キューバ経済にとって大きな損失となる。過去にはなんと、8度も亡命も試みて、その度に失敗してキューバに強制送還された選手もいた。

亡命の橋渡しには“女”の影が……

 選手たちの亡命には、厳しい目を光らせているキューバ政府。だからこそ、海外逃避を援助することで金を稼ぐ、怪しい仲介人たちが存在する。エージェントたちはあの手この手で、亡命を希望する選手を手助けし、その対価として大金を得るのだ。

 例えば、他国で試合を行うキューバ代表選手に対して、練習場に女を送り込んで警戒心を解き、女はサインを求めるふりをして、さりげなく手紙を渡して集合場所を伝え、その場所でエージェントと落ち合って亡命した……という例は、いくらでもある。

 他にも、監視役のコーチを外で待たせている間にトイレの窓から抜け出し、エージェントと合流してそのまま亡命した例や、亡命決行の数週間前から森に隠れ、木の上に見張りを立てて過ごし、行方を眩ませた後、船に乗って旅立った例もある。大きな船ではすぐに噂になってしまうため、小さな「いかだ」に乗って、カリブ海を渡った強者もいるという。2004年の10月には、フロリダ州の港町に6選手が乗った小さな小舟が到着。全員、キューバ代表チームでプレーした経験を持ち、現在もメジャーで活躍している選手もいた。

今後はどうなる? MLBに大量流入の可能性も

 アメリカ政府は現在、キューバとの商取引を一切禁止している。よって正式なルートでNPBにやってきたセペダやグリエル、デスパイネのように、亡命せずにMLBへ移籍することは現時点では実現していない。両国の関係性、過去の歴史から、当面は難しいだろうが、もしも日本と同じように合法的にMLB行きが解禁となれば、日本以上にお金が動くアメリカからより多くの外貨が獲得できるので、多くの選手がMLBへ送り込まれるだろう。

 一方の日本球界。今季、日本に在籍した選手の多くは、「また日本でプレーしたい、できれば同じチームで、」とコメントを残しているが、所属チームについてはキューバ側の意向もあるため、来季は別の球団にシャッフルされる可能性もある。

 いずれにせよ、キューバ政府はどのようなルールを新設するのか。今後も注目していきたい。

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