[架神恭介の「よいこのサブカル論」]

『ニンジャスレイヤー』初のライブイベント開催、唸る轟音シャミセンがファンを魅了

豪華かつベストなメンバーでのライブパフォーマンスとなった

 このパンク・バンドのライブ描写を初めて読んだ時、筆者の頭がクラクラしたのは想像に難くないだろう。ドラム、タイコ、オコト、ヴォーカル……。フィクションとはいえ凄まじい編成のパンクバンドだ。

 だが、この光景が半ば現実となる夜が訪れた。『ニンジャサウンド・ギターサンダーボルト』だ。アメリカ在住のブラッドレー・ボンドとフィリップ・ニンジャ・モーゼズが、日本文化をよく知らないままに書いた大人気サイバーパンクニンジャ小説、『ニンジャスレイヤー』の初めてのライブイベントである。

ニンジャスレイヤーの世界観が現実に

 前回、ニンジャスレイヤーのドラマCDのサウンドトラックのツイッター同時再生実況イベントという、なんだか良く分からない不思議な催しが行われたことをご報告したが(「ニンジャスレイヤー」前代未聞のサントラCD実況イベントをツイッター上で開催)、今度はそのサウンドトラックの音楽ライブなのである。会場である「LIVE GATE TOKYO」にはヨタモノめいたファンたちが詰めかけ、開演前から長蛇の列を作り、油断ならぬアトモスフィアを放っていた。

 ライブは二部構成。一部はサウンドトラックCDの楽曲を使ったDJプレイ、二部がバンド構成による生音ライブである。

 一部と二部の間では、ニンジャスレイヤーとSEGA、TAITOのゲーム作品とのコラボレーション企画が発表された他、シークレットゲストである雨宮天さん、藤原啓治さんが登場し、ミニトークショーも行われた。

 ニンジャスレイヤーのドラマCDにおいて、雨宮さんは人気女性キャラクターであるヤモト・コキ、藤原啓治さんはヤモトの師匠的立ち位置となるシルバーカラスを演じた縁である。幾つかの質疑応答に答え、またニンジャスレイヤーに関する今後の抱負などについて語り会場を沸かせた。

 二部のバンドは、ギター、シャミセン、シャクハチ、タイコ、DJの構成で行われ、禍々しい黒メンポを付けたリードシャミセンがギターソロと競ってシャミセンソロを披露するなど、ヘビィメタルに和楽器を重ねる独特の音楽性を見せた。

 冒頭に挙げた小説描写におけるバンド編成(ドラム、タイコ、オコト、ヴォーカル)は流石にストイック過ぎる気がするが、今日のライブのこの構成でも十分にハードなロックが行えるというのは驚きであった。

 「プレリュード・ゼン ニンジャスレイヤー_ナラク・ウィズイン」から始まったライブは、「ラスト・ガール・スタンディング」で一旦終了し、最後にアンコール曲の「ニンジャスレーヤー_ナラク・ウィズイン」でもって完全終了となった。なお、二部ライブのメンバーは以下である。

シャミセン:-KIJI-
-KIJI- オフィシャルウェブサイト

ギター:PANTHER 
PANTHER OFFICIAL SITE

シャクハチ:平野透山
平野透山のブログ

DJ:Q'HEY
FLYING COW - DJ Q'HEY blog:So-netブログ

タイキスト:茂戸藤 浩司
茂戸藤 浩司 WEB SITE

 ギターのPANTHER=サンはソロアルバムを四枚も出している知る人ぞ知る人気ギタリスト。またDJのQ'HEY=サンも25年の活動歴を持ち日本のクラブシーンを牽引してきたトップDJ。和楽器の方々もロック音楽と和楽器との融合をかねてより実践しており、ニンジャスレイヤーの音楽性と親和性の高い奏者であった。

 今回のバンド「OMURA/Entertainment Inc. Music Division」には豪華、かつベストなメンバーが集っていたと言えるだろう。なお、ニンジャスレイヤーの楽曲は、藤澤健至=サンと共にタイキストの茂戸藤=サンが司っているとのことだ。

 演奏者であるOMURA/Entertainment Inc. Music Divisionに対し、来場したファンたちは惜しみなき喝采とキツネサインを送り、労いの言葉である「オツカレサマドスエ!」を連呼した。終演後、興奮した女性ファンの「私、一生オムラに付いていく!」の一言が印象的な一夜であった。

著者プロフィール

作家

架神恭介

広島県出身。早稲田大学第一文学部卒業。『戦闘破壊学園ダンゲロス』で第3回講談社BOX新人賞を受賞し、小説家デビュー。漫画原作や動画制作、パンクロックなど多岐に活動。近著に『仁義なきキリスト教史』(筑摩書房)

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