民主・海江田や石原慎太郎も急いで引っ越し…落選議員の末路

新人議員は24日に初党院となる

 12月14日に投開票された衆議院議員選挙では、みんなの党の元代表だった渡辺喜美氏、民主党代表の海江田万里氏、次世代の党・最高顧問の石原慎太郎氏といった大物議員の落選が話題となった。

 一方、今回誕生した新人議員は43人。衆議院選挙では毎回100人前後の新人議員が誕生していただけに、今回の選挙は新人議員に厳しかったといえる。

 初当選した議員は登院初日に国会の正面門をくぐるが、この瞬間がなによりも選挙戦の辛苦を忘れさせてくれるのだという。初登院に感動を覚えるのは、新人議員ばかりではない。

 初登院日は国会正面門にマスコミのカメラが大挙して押しかける。いつもはうっとうしくつきまとうマスコミにも議員先生たちは笑顔を振りまき、カメラマンのリクエストに応じてガッツポーズをきめる。このときに、ようやく国会議員になったことを実感する議員も少なくない。

落選すればただの人…その後の活動とは

 初登院の晴れがましい光景を横目に、落選した議員は何をしているのだろうか? 「落選すればただの人」と揶揄される。実際、それまで「先生、先生」ともてはやされた栄光は過去のものとなり、落選者を慕う人は激減する。

 しかし、落選したからと言って落ち込んでばかりはいられない。当選した議員以上に、落選議員にはやらなければならない作業があり、かなり忙しい。

 例えば、議員会館の自室には書類や書籍をはじめ新聞紙や業界紙などが山のように積まれている。また、自分の実績をアピールするパンフレットやポスターもたくさんある。これらは安易に処分できるものばかりではない。今後、議員活動を続けるにしても引退するにしても大事なものとなる。

 落選議員は国会議員ではないので、議員会館を明け渡さなければならない。次の国会が召集されるまでにダンボール箱にまとめて移動させなければならない。替わりの事務所は私費で探さなければならないが、そう短時間で見つけることは難しい。いったんは自宅や地元の事務所、後援会事務所へ移動させることが多いようだ。

 引き払うのは議員会館ばかりではない。地方を選挙区にする国会議員は議員宿舎に住んでいるケースが多く、こちらも落選と同時に引っ越しを強制させられる。

 落選議員には他にもある。これまで苦楽を共にしてきた秘書の処遇も頭を悩ませる問題だ。国会議員は公費で3人の秘書を雇うことができる。一人は就任に必要な要件が定められている政策担当秘書で、これは特別職国家公務員とされる。政策担当秘書は引っ張りだこなので再就職先はあまり困らないが、第一秘書、第二秘書の再就職はなかなか容易にはいかない。秘書たちの再就職先のことなどまで面倒見切れないという薄情な議員もいるようだが多くの議員は政党本部事務所や衆議院・参議院職員など、再就職先の世話をするという。

 ちなみに、2009年の衆議院選挙では多くの自民党議員が落選し、失職した秘書も大量に出た。逆に議席を増やした民主党は秘書の数が足りず、自民党議員の秘書を再雇用して急場を凌いだ。今回の衆院選で議席を倍増させた共産党は、落選した自民党議員や民主党議員の秘書をとらばーゆさせるのではなく、独自に秘書を公募する予定だという。

 国会法では、衆議院総選挙後30日以内に国会を開かなければならないと規定されている。今回は12月24日に特別国会が召集される予定になっており、投開票からわずか10日での国会となる。そのわずかな時間で、これらの作業をすべてこなさなければならないのだ。

 落選すると、ひっそりと引退してしまう議員もいる。しかし、多くの議員は町内会へのあいさつ回りや商工会・農協といった各種団体回り、駅頭や商店街入り口で辻立ちといった次の選挙への準備を始める。

 その間、大学の非常勤講師やシンクタンクの研究員などで食い扶持を稼いだりもするが、当然ながらフルタイムでは働けないのでもらえるお金はわずか。いまや売れっ子タレントとして活躍する東国原英夫元衆議院議員や杉村太蔵元衆議院議員のようにテレビで活躍できる国会議員は一握りしかいない。

 再起を目指す落選議員の頼みの綱は、奥さんである。当選すれば地元を守り、落選中は一家の大黒柱として家計を支える。政治家にとって妻は、なによりも大事な存在といえる。

 今回、落選してしまった議員たちの苦労が実り、バッチをつけていつの日か国会に現れることを心から願いたい。

(文/小川裕夫)

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