[中国のヤバすぎる正体]

【中国】人民解放軍が日本人スパイを射殺…デタラメ記事を中国人が盲信する理由

人民解放軍(「新浪軍事BBS」より)

 こんにちは。中国人漫画家の孫向文です。

 中国の軍事系の記事や番組の中には、真偽不明なものがたくさんあります。例えば、2014年5月11日、政府の軍事サイト「楚秀網」に以下の記事が掲載されました。

「中国は二隻目の空母を作っている。日本のスパイが、それを偵察しにやってきた。彼らは空母の周りにあるマンションに一年間泊まり、毎日こそこそと盗撮。人民解放軍は彼らに気づき勧告したものの、やめなかったため、射殺した」

 これがもしも本当だとしたら、日本でも大騒ぎになっているはずですよね。ですが、日本の知り合いに尋ねてみても、誰もそんな一件は知らないという答えが返ってきました。

 この手のサイトにおいては、たいていの場合、「とある軍事評論家」といった架空の識者が立てられ、妄想のような記事が書きたてられます。ですが、中国国民は、それが政府の機関メディアのため、本当のことだと信じ込むのです。

世論は政府によって操られている

 中国の世論は、中国政府によって誘導されています。前出の根も葉もない軍事記事も、政府の指示や後ろ盾によって書かれたことは間違いありません。中国国民はこうした記事を読むと、「日本は中国の軍事力に脅威を覚え、姑息にも偵察している」と思い込みます。敵国である日本を貶めることができる上、中国の軍事力を国民に誇示できるという、一粒で二度おいしい記事なのです。

 また、このように国民の世論を誘導する上で、重要な役割を担っているのが「五毛党」という存在です。彼らの多くは普段、主婦や学生として過ごしていますが、政府からお金をもらって、ネット上に政府にとって都合のいい書き込みをします。ひとつの書き込みにつき、「五毛(0.5元)」のお金が入ると言われていることから、五毛党という名が付きました。

軍事系の掲示板では五毛党が暗躍しています。例えば、「戦略論壇」という掲示板を見ると、やはり、真偽の不確かな書き込みが氾濫していました。こういった具合です。

「とあるメディアの報道によると、日本国籍の容疑者が人民解放軍に見つかり、逮捕されたという。その日本人は怪しげな電子機器をたくさん持ち、宝鶏市の地理を無許可で測定。とある中国政府機関は、人民解放軍の演習を追跡していたと発表した」

 まるで新聞記者のようなプロっぽい文章で、信憑性のある書き方です。そのため、こうした書き込みを信じてしまう人も多々いることでしょう。そして、同じような軍事系サイトを見ると、同様の内容の書き込みが見受けられることもあります。これは同じ人が書いているのでしょうか? いえ、おそらく、そうではないでしょう。

 政府が模範文を作成して五毛党に送付し、それを世間に広めるように指示しているのです。香港の雨傘革命の折には、デモを支持した香港芸能人をバッシングする書き込みがネット上に溢れかえりました。ですが、そのときも書き手は別人のアカウントだというのに、同じ文章が多々見受けられました。五毛党が政府の模範文をそのまま貼り付けていたからです。

 こうした姑息な書き込みを指示する政府も政府ですが、わずかながらの金のために政府に加担する中国国民(五毛党)も、本当にどうしようもない人たちですね。

(構成/杉沢樹)

著者プロフィール

漫画家

孫向文

中華人民共和国浙江省杭州出身、漢族の31歳。20代半ばで中国の漫画賞を受賞し、プロ漫画家に。その傍ら、独学で日本語を学び、日本の某漫画誌の新人賞も受賞する。近著に『中国のもっとヤバい正体』(大洋図書)

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