オヤジジャーナル界がやりあっている。まず読売新聞の記事。【朝日の複数記者、外務省が退避要請のシリア入国】(1月31日)
続いて産経新聞。【朝日記者がシリア国内で取材 「非常に危険」外務省幹部が強い懸念】(1月31日)
《外務省幹部は「記者も当事者意識を持ってほしい。非常に危険で、いつ拘束されてもおかしくない」と強い懸念を示した。支局長はツイッターで、26日にシリア北部のアレッポに入ったと伝え、現地の様子を写真を交えてリポートしている。》(産経)
朝日の記者は挑発気味のツイッター投稿で反論
つまり読売・産経は、朝日はいかがなものかと憤慨しているのだ。これに対し、朝日の記者がツイッターで《日本国の要請に逆らって危険地帯に立ち入るとはけしからん、ウチは我慢してるのにというフラストレーションがありあり(笑)。政府広報じゃないんだから、もっとジャーナリズムしませんか。もちろんリスクを慎重に吟味した上でね。》と挑発気味につぶやいたことが話題になった。
ああ、「憎しみの連鎖」はここにある。完全に巡ってます。この朝日VS読売・産経というバトルは中東情勢ぐらい根が深い。去年だけでも、朝日が慰安婦報道での「吉田清治証言」を虚偽と認めた件、そして「吉田調書」スクープでの内容が誤報であった件で、読売・産経は張り切った。
もっと言えば朝日VS読売・産経は安倍政権への距離感が誰が見ても正反対。そこを前提としてのイデオロギー闘争、ひいては販売競争に拍車がかかっている。野次馬にとってはたまらない緊迫関係。私は今回のシリア入りは朝日新聞が一矢報いたと思う。記者というからにはお上が止めても最前線に行ってしまうのが「性分」だと思うからだ。
昔の映画やドラマで描かれる新聞記者ってとにかく武骨。雑然とした社内には大声が飛び交い、記者たちの目は常に猟犬のよう。もちろんあくまでイメージでしかないが、その伝統があるならシリアとか行っちゃうだろうなぁと。
あといつも思うのですが、危険なところへ行くジャーナリスト(特にフリー)には敬意を払いつつも、こちらはもっとフラットに見ていればいいと思う。というのはよく「フリージャーナリストが危険な地域に行くのは大手メディアが行かないからだ」という大手への非難がある。自分たちは安全な所にいてフリーに行かせているのだ、という。
この点について、私は以前に報道カメラマンの宮嶋茂樹氏に尋ねてみた。「不肖・宮嶋」は世界中の修羅場へ取材に行く。私がトークライブで会った時も震災直後の東北から帰ってきたばかりだった。宮嶋氏は「大手メディアが現場から退避すればするほど自分にとってはおいしいですわ。ウチらの仕事が増えますんで」とあっさり言ってのけた。ジャーナリストとしての崇高な精神もあるだろうが、誰も行かないならおいしいという健全な野心。聞いていて気が楽になった。
先日、BSスカパーの『ニュースザップ』という番組で常岡浩介氏と一緒になったとき、「常岡さんて何で怪しいと言われるんですか」と本人に聞いたところ、「イスラム国の司令官と一緒にイスラム国の旗の前で銃を持って撮影すれば非常識な行為ですし、批判されるのも当然。しかしそれをやることでイスラム国の取材ができるようになった。非常識なことをするだけの価値があったと思います」と常岡氏は答えた。
そして、「朝日や読売の方がイスラム国で銃を持って撮影したらすぐクビになると思います。フリーだからできるのです」とも。みんなタフだ。それを考えたら朝日だってシリアぐらい行くだろなと思う。ましてやいろいろ「挽回」しなくてはいけないだろうし。
皆さんは今回の件どう思いますか。
著者プロフィール
お笑い芸人(オフィス北野所属)
プチ鹿島
時事ネタと見立てを得意とするお笑い芸人。「東京ポッド許可局」、「荒川強啓ディ・キャッチ!」(ともにTBSラジオ)、「キックス」(YBSラジオ)、「午後まり」(NHKラジオ第一)出演中。近著に「教養としてのプロレス」(双葉新書)。