【プロ野球】阪神・福留&西岡…復活にかける男たちのキャンプ事情

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 2月に始まったキャンプは、早くも第2クールに突入。戦力がふるいにかけられる時期となってきた。主力や新戦力に注目が集まる一方で、復活を目指して奮闘する選手も少なくはない。

 まずは、昨シーズン2位ながらもCSで王者読売ジャイアンツを下し、9年ぶりの日本シリーズに進出した、阪神タイガース。このチームにも復活を目指す選手がいる。その選手は、西岡剛だ。

 西岡は、2013年シーズンに2年4億+出来高の契約でタイガースに入団。メジャーでは2年間で、71試合の出場、通算.215と、結果を残せなかったが、メジャー移籍前の千葉ロッテマリーンズでは、看板選手として活躍。首位打者1回、盗塁王2回という、輝かしい記録を打ち立てる。とくに2010年は、.346で首位打者に輝いただけでなく、内野手としては初の200本安打を達成するなど、驚異的な数字を残したこともあり大きく期待された。

 しかし、入団1年目こそ2塁手としてベストナインに選出される活躍を見せたが、2年目の昨シーズンは大怪我に見舞われ、復帰後も本来の調子を取り戻せずに、国内自己ワーストの.237。そればかりか、日本シリーズでは守備妨害を取られ最後の打者となり、大バッシングを受けるなど散々なシーズンであった。

 そして今シーズンは、セカンドには昨シーズンブレイクした上本博紀が控えており、レギュラーも確約されていない状況にある。かつてのスター選手が置かれている立場は、非常に苦しい。しかし、今シーズンにかける気持ちは強い。7キロの減量をしてキャンプインした姿が今年にかける決意を裏付けている。

ファンのヤジを吹き飛ばす福留孝介

 同じくタイガースの福留孝介も、復活のシーズンにするために意気込んでいる。福留もまた、中日ドラゴンズの看板選手として大活躍し、メジャー経由でタイガースに入団した選手だ。ドラゴンズでは首位打者を2回獲得。2006年には、.351で首位打者に加え31本塁打、104打点の成績を収めMVPに選ばれるなど、球界の顔として君臨していた。

 その福留もメジャーでは通算5年で.258、42本塁打195打点と、日本時代ほどの活躍を見せれぬまま帰国。2013年からタイガースへ入団している。

 メジャーでも一目置かれた出塁率の高さで活躍を期待されたが、怪我等で精彩を欠いた。移籍後最初のシーズンは63試合の出場に留まり、打率は.198、出塁率も.295と、期待を大きく裏切ってしまう。翌2014年シーズンも、思うような活躍ができず自身初の不振による2軍落ちも経験。2年続けて悔しいシーズンとなってしまった。

 高額年俸で入団しながら期待を大きく裏切った福留に対し、熱しやすいタイガースファンからの風当たりも強い。同年にメジャーから入団した西岡と共に不良債権とバッシング受けているのだ。

 しかし、数字的には物足りなかった福留だが、シーズン後半には印象に残るプレーを連発。CSファーストステージで前田健太から放った一発は、チームを日本シリーズに導いた一発と言っても過言ではなかった。

 今シーズンは昨年の後半戦の勢いそのままに、キャンプのフリーバッテイングでは67発の柵越を放つなど、状態はかなり良い。西岡と共に2人のメジャー選手が本領発揮となれば、今シーズンのタイガー スも他球団の驚異となるだろう。

日本を背負って立つとも言われた栗原健太

 24年ぶりの優勝に期待が高まる広島カープにも、復活を目指す選手がいる。カープかつての4番、栗原健太だ。栗原は2006年からレギュラーに定着。2008年からはカープ不動の4番として君臨。チームの顔として活躍を続けた。

 栗原は、長距離ヒッターながら、三振が極端に少ない確実性を持ち、反対方向へ力強い打球を飛ばす器用さも兼ね備えている。バットのヘッドを内から外へ投げ出す高等技術、「インサイドアウト打法」をマスターしている数少ない選手でもある。ジャイアンツ監督原辰徳や終身名誉監督長嶋茂雄に「将来の日本を背負って立つ打者になる」と言わしめたほど、高い素質と実力を持っていた。

 そんな栗原も2008年の、.332 23本塁打103打点の好成績をピークに度重なるケガから数字は伸び悩む。

 持ち味である右腕で押し込む打撃ホームの影響で肘痛に苦しみ、2008年にはその肘を手術。手術をしたものの痛みは癒えず、肘痛は続いた。その最中にも、腰痛、右手首骨折など度重なる怪我に見舞われ、出場すらままならぬ状態に陥ってしまう。2011年に復調しベストナインを受賞するも、翌年肘の痛みは限界を超えて、2度目の手術。それから2年続けて無本塁打に終わり、再起をかけて臨んだ昨シーズンも肘の痛みが癒えず、2001年以来の一軍出場なしでシーズンを終えてしまった。

 そして迎えた今季、オフシーズンには3度の目の肘の手術を行い、ラストチャンスにかけている。手術の影響でキャンプは2軍スタート。それに加え、ファーストのポジションは稀に見ぬ激戦区となっているなど、復活への道はあまりも険しい。

 しかし、ファンは栗原の復活をまっている。弱い時代のカープを一人で牽引し、そのホームランに何度も夢を見せてもらった過去がある。今シーズンのカープは優勝への期待値が高い。優勝の輪の中に栗原がいてほしい。それはファンの総意であるのは間違いないはずだ。

かつての日本人最速右腕・由規

 最後はヤクルトスワローズの剛速球投手、由規だ。2007年の高校野球全国大会で、155キロを計測し話題をさらった由規は、2008年ドラフト会議で5球団競合の末にスワローズに入団。1年目から1軍出場をはたすなど、順調に成長し、2年目には、5勝10敗と負け越しながらもローテンション投手として定着。オールスターにも出場するなど、大きく飛躍した。

 そして迎えた2010年、由規は覚醒する。8月26日、神宮球場での対横浜ベイスターズ戦の5回、当時日本人最速の161キロの剛速球を計測したのだ。日本人として初の160キロ台の速球に、球場は大興奮に包まれたのは言うまでもないだろう。

 この年、12勝を挙げる活躍を見せた由規。翌年はスワローズのエースへと駆け上がるだろうとした期待された2011年9月、右肩痛を発症。それ以来、1軍での登板はない。

 速球という最高のロマンをもつ投手だけに、その復活を期待する声は非常に大きい。昨シーズン、ファームで792日ぶり実戦投板を果たし、球速も152キロを計測するなど、復活の手応えは掴めている様子の由規。元最速投手の復活はスワローズ躍進には欠かせない。今季大型補強を断行したスワローズに由規というピースが加われば、セ・リーグの台風の目となるのは間違いないだろう。

 ここで紹介した選手以外にも、各球団には復活を目指す選手が多数いる。プロの世界で生きるアスリートたちの奮闘劇は、見る者に大きな感動を与えてくれる。今シーズンの復活に、期待したい。

(取材・文/井上智博)

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