リコール運動が発生…舛添都知事の親韓国路線が地方の過疎化を救う!?

舛添要一公式サイトより

 舛添要一都知事が就任から1年が経過した。1年間の舛添都政を検証してみると、石原・猪瀬路線と明らかに異なる独自色が打ち出されている。それが、東アジアを重視した都市外交政策だ。

 舛添都知事は就任以後、ロシアのソチやイギリス・ロンドンなどを相次いで視察している。これは2020年に開催予定の東京オリンピックの事前準備のためだが、舛添都知事が訪問した国には2008年にオリンピックを開催した中国や2018年に冬季オリンピックを開催予定の韓国なども含まれていた。

 保守系団体は舛添都知事の訪中・訪韓に反発。就任1年にあたる2月12日、リコール運動の解禁となるため、早速、リコール運動を開始している。リコールには13万人超の署名が必要となるため、実現は難しいとの見方が強い。とはいえ、リコール運動が起こったことは、今後の舛添都政に少なからず影響を与えるだろう。

 保守系団体が主張する「舛添都知事の親中・親韓路線」は都知事を解職させるほどの瑕疵にあたるだろうか? 石原都政でブレーンを務めた有識者はこう語る。

「中国や韓国、ロシアと領土問題を抱える我が国ですので、保守系の人たちは中国・韓国が関わると無条件に嫌悪感を露わにしがちです。近年になって中韓の国際的立場は向上し、世界の国々も中国・韓国の存在を重要視するようになっています。それでも、日本の方が国際的信用度は圧倒的に高く、いまでも日本に敬意を示す国が多い。だからこそ、日本は冷静にふるまい、根気よく世界の国々を説得して主張を広めるしかないのです」

年間30万人の観光客が対馬に

 年々、中国・韓国からの訪日外国人観光客は増加しているが、アベノミクスによる円安誘導でそれらは加速し大きな経済効果をもたらした。特に韓国人観光客なしでは成り立たない地方自治体がある。それが長崎県対馬市だ。

 長崎県対馬市は韓国第二の都市・釜山とは約50キロメートルしか離れていない。文字通り、目と鼻の先にある。対馬と釜山の間には国際フェリーが毎日運航しており、年間30万人の韓国人観光客がやって来る。

「対馬に韓国人観光客が増えたのは、小泉構造改革の特区制度に認定された2003年からです。これにより韓国から対馬への渡航にビザが必要なくなったので手軽な外国旅行として韓国人から人気が出たのです。韓国人観光客はあっという間に10万人を突破し、過疎化の進む対馬にとって大きな経済効果を生んでいます。韓国人観光客なしでは、対馬島民は生きていけません」(対馬市市議会議員)

 対馬の中心市街地である厳原を歩けば、そこかしこで韓国人観光客を目撃できる。ネットでは、こうした光景を『対馬が韓国に占領されている!』と扇情的に書かれることも珍しくない。対馬への年間観光客は、韓国人が約30万。日本人は約1万人。約30倍もの差がある。韓国人観光客が目立つのは当たり前なのだ。先の有識者も長崎県の現状をこう説明する。

「中国漁船が尖閣諸島や小笠原諸島近海を侵犯したことは大きな話題になりましたが、実は長崎県の方が事態は深刻なのです。あまり報道されていませんが、五島列島でも中国漁船の領海侵犯が頻発しています。これらは過疎の島がターゲットなのです。そういう意味で、離島の経済を活性化させて過疎化させない仕組みを考えなければ日本の国土は守れません。韓国人観光客の落とす金で支えられているとはいえ、対馬は日本国民が生活している。それが領土を守ることにつながっているのです。私は舛添都政の親アジア戦略に必ずしも賛成していませんが、韓国との友好関係を深めることで離島を守る効果はあったと考えます」

 第二次安倍改造内閣は疲弊する地方にアベノミクスを浸透させようと“ローカルアベノミクス”を打ち出しているが、その恩恵は離島に届いていない。本来、対馬は日本の国土なのだから日本人が観光に行ったり、産業を興して対馬経済に貢献するのが最善策である。それがわかっていながら、対馬への日本人観光客は増える兆しが見えない。韓国人観光客に依存するしかないのだ。

 東京と対馬、遠く離れた地で交錯する韓国との関係。オリンピックを間近に控え、日本は東アジア諸国と融和を選ぶのか? それとも対立を選ぶのか? まるで『イソップ寓話』の北風と太陽のような話だが、総理大臣や都知事、そして主権者である私たちはどのような判断を下すべきなのだろうか。

(文/小川裕夫)

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