大谷翔平&栗山監督よ、一刻も早く「二刀流」を捨てろ!|愛甲猛コラム

高卒3年目での開幕投手は07年のダル以来だが…(photo by Ship1231)

 日本ハムの栗山英樹監督は、今年の開幕投手を大谷翔平と明言した。

 3年前の斎藤佑樹の際は「客に媚びるのもほどがある」と感じたが、昨シーズンの日本ハムで2ケタ勝利をマークしたのは大谷だけだ。24試合に先発し11勝4敗、投球回数155.1イニングで防御率2.61、勝率.733、奪三振179。いずれも立派な数字だ。しかし、打者としての大谷は「いい選手」ではあるが「すごい選手」とは思えない。まだ完成までほど遠いのに、周囲もマスコミも、なぜこれほど持ち上げるのか。

 昨シーズンは212打数58安打、打率.274、本塁打10本。規定打席未到達でこの打率は、チームへの貢献度で考えれば大したことはなく、シーズン査定でも給料アップには結びつかない。「これぐらいの成績ならオレを出せ」と心で思っている選手はいる。

 肩こそ強いが、守備範囲は大して広くはない。だいたい、他の選手のようにキャンプを通じて野手の練習をしているわけではない。昨年の野手としてのスタメン出場はわずか8試合(ライト6試合、レフト2試合)。外野手としての守備力は一軍レベルにないと首脳陣も判断しており、指名打者もしくは代打起用だ。

打者の筋肉と投手の筋肉はまったく違う

 メジャーのスカウトが本国に送るリポートも「投手・大谷」についてのみだ。「投手としては素晴らしいが、打者としては、このレベルはゴロゴロいる」というのが真実。「打者をやりたがることで余計なケガをしないか」との声まである。

 世界最高の野球選手が集まっている本場メジャーに二刀流がいないのは、「やらない」のではなく「やれない」からだ。

 右投げ左打ちの大谷の場合、投げるときと打つときの、筋肉の動き(特に右腕)が逆になる。これが果たして「投げることにプラスなのか」と考えているだろうか。左打席に立てば立つほど投手としての弊害が出てくると、オレは感じている。

 投手の筋肉と野手の筋肉はまったく違う。投手としてプロ入りしたオレは、3年で打者に専念したが、その際、打者の筋肉をつけるためにどれだけ苦労したか。

 大投手の道を歩みながらケガで打者に転向した権藤博さんも、オレと同じく「二刀流が通用するほどプロは甘い世界ではない。早く投手に専念しろ」と語っている。二刀流とは野球をやっている人間がやるべきことではない。

 何度も言うが、打者としてあのレベルなら、投手に専念させて15勝から20勝を目指す方がはるかにいい。投手としては、田中将大に勝るとも劣らない素質をもっている。夢の30勝など、投手としてスーパースターを目指すほうが、はるかにためになる。

 とてつもないピッチングも「やれるかもしれない」と感じさせてくれるのが「投手・大谷」だ。

栗山の指揮も“100年早い”

 これだけの投手を預かっている栗山監督は、なぜ大事な今の時期に、打者への夢を捨てさせないのか。話題性ばかり重視する指揮官が、大器の将来を真剣に考えているとは思えない。

 いつだったか、テレビで「(二刀流を)挑戦と考えていたら100年早い」などとコメントしていたが「おまえが監督するのも100年はえーよ」と返してやる。

 日本プロ野球史上に残る大エース、江夏豊さんは、連日アウトローだけをめがけ、キャンプ中に2000球も放ったと聞く。その江夏さんを筆頭に、金田正一さん、稲尾和久さん、あるいはダルビッシュ有、田中将大など歴史に名を刻んだ投手の中で、打者大谷を評価する声があるだろうか。

 大谷が10年後にも二刀流を続け、押しも押されもせぬレギュラーであったなら、オレは必ず大谷に詫びると約束する。

 それにしても。最近の野球は本当に“やさしい”。昔なら、とっくに他球団の投手からぶつけられている。もしもオレがマウンドにいたら、プロの厳しさを確実に味あわせてやる。

愛甲猛(あいこうたけし)
横浜高校のエースとして1980年夏の甲子園優勝。同年ドラフト1位でロッテオリオンズ入団。88年から92年にかけてマークした535試合連続フルイニング出場はパ・リーグ記録。96年に中日ドラゴンズ移籍、代打の切り札として99年の優勝に貢献する。オールスターゲーム出場2回。
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