洗濯機に辛ラーメンも!? ライバル製品を蹴落とす韓国企業の醜い争い

両者の争いはどこまで続く?

 韓国家電大手LG電子のチョ・ソンジン社長が器物破損、名誉棄損の容疑で在宅起訴された。競合であるサムスン電子の製品展示会で、洗濯機を故意に破損させたという疑いが起訴理由だ。今回の起訴が固まる前、韓国検察はサムスンとLGの間に入り仲裁を試みたが、両社の間に示談は成立しなかった。サムスンはLGの謝罪に「誠意がない」と突っぱね、LG側も「それならば仕方ない」と居直り、いよいよ今回の在宅起訴に発展してしまった形だ。

「正直、家電製品の展示会で、製品が破損してしまうことはよくあること。仮に競合社の社長が故意に壊したとしても、起訴までいたるのは相当、珍しいことではないでしょうか。やはり、両社の間には長い間、双方堪え難い遺恨があったと考える方が妥当だと思います」(韓国大手家電メーカー・営業担当者)

 サムスンとLGは、韓国国内にとどまらず、いまやグローバル家電市場で覇権を争う関係だ。そんな両社の対立は、今回の事件が初めてではない。

 2012年には、サムスン系列のサムスンディプレイと、LG系列であるLGディスプレイの間で、「OLED技術」を巡って法廷闘争が勃発している。サムスンディスプレイは、LGディスプレイが技術を不法に盗んだとして、LGに入社した元サムスン職員とLGディスプイの役員を告発。最終的に、元サムスン職員とLG役員には有罪が、LGディスプレイ社には無罪が言い渡された。個人間の犯行は認められたが、会社の関与は認められなかったというわけだ。

 韓国メディアの一部は、その「OLED事件」が、今回の“洗濯機事件”へと続く伏線になっていたのではないかと予想している。

 ところで、韓国では競合社同士が、市場での正当な評価以外で、激しい“場外乱闘”を繰り広げるケースが少なくない。

ポテトチップスからIT業界でも骨肉の争いが……

 例えば、日本でも有名なロッテと、辛ラーメンで名の知れた農心のケース。両社はともに市場の覇権を争うライバルだ。2014年、韓国社会ではヘテ製菓が発売したヒット商品「ハニーバターチップ」が社会現象となったが、ロッテが「蜜を食べたポテトチップス、農心が「スミチップ・ハニーマスタード味」という類似商品を相次いで販売開始する。両者の商品は、消費者目線で見ると、パクったと言われてもおかしくないほどにハニーバターチップスに味が類似していた。

 もともとロッテは韓国国内にポテトチップスの生産ラインを持っていないが、「蜜を食べたポテトチップス」をわざわざ開発したとも報じられている。ちなみにロッテと農心はともに、ロッテ財閥グループのシン一族が代表を務めている。近年では、ロッテグループを取り巻いた兄弟間の経営権争いや、市場を巡る対立が数多く報じられているが、このパクリ疑惑も、因縁の深い競争相手に負けられないというロッテ、農心側のあせりから生まれたと簡単に予想できる。

 IT業界では、検索大手NAVERと、カカオトークなど有名サービスを展開するダウムカカオが火花を散らしている。こちらは、ダウムカカオが新サービスを発表すると、すかさずNAVERが類似サービスを発表するのが定番となっている。法廷闘争にまで発展した例はないが、もはやどちらがオリジナルのサービスだったか分からないほどに、相手を牽制した類似サービスが次々と登場するという状況が長く続いている。ちなみに、両社の代表はともにサムスン系列出身。一時期は、ともに仕事をした“戦友”でもある。ただ現在は「ふたりの仲が良いとは、お世辞にもいえない」(韓国IT記者)状況らしい。

 韓国財閥の争いは、企業対企業という構図だけではない。昨年、SBSのニュース番組が報じたところによると、財閥系企業内部では、2社に1社、約半分の割合で経営権や後継者の席、財産などを巡って骨肉の争いが起きているという。

 一面では、国内競合社同士の激しい争いが、国際競争力を養っているという風にも捉えられなくもないが……。いずれにせよ、いきすぎた韓国財閥内外のみにくい争いは、韓国国内だけではなく、世界中の嘲笑の種となることだけは避けられなくなりつつある。

(取材・文/中川武司)

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