567人が眠る地…タイ・バンコクの知られざる「日本人納骨堂」に行ってみた

バンコク・日本人納骨堂(写真/丸山ゴンザレス)

 東南アジアを代表する観光地タイの首都バンコク。年間に訪れる日本人はおよそ150万人。観光客の目当てはグルメ、マッサージ、王宮や寺院などの人気のスポットを巡ること。

 ところが観光客に知られていない裏観光地と呼べる場所がある。日本人納骨堂である。

 チャオプラヤ川のほとりに建つひときわ立派なラーチャブラナ寺(ワットリヤップ)。

 この敷地内の一角に日本人納骨堂がある

 バンコクに日本人の眠る場所をつくりたいという日本人会の有志が資金を調達し、1935年に建立された。現在に至るまで日本人の僧侶によって管理されてきている。ここに眠っている日本人は現在までで567人。

 取材で訪れた筆者に対応してくれたのは現在の堂守・水木無我さん。滞在1年目で現在23歳だという。

 彼の案内で納骨堂を見て回る。

 仏堂の御本尊は釈迦如来。鎌倉時代に作られたという立派なものが置かれている。日本から運ばれたものだ。

 壁面と地下室にはお骨が収納されている。今でも毎年数人は納骨されているそうだ。

陸軍大佐・辻政信も潜伏

 この納骨堂には辻政信という男の伝説が残されている。

 辻は陸軍大佐で数々の作戦参謀として活動しただけでなく、暗殺事件など多くの戦争犯罪に関わったとされていた。そのため、戦争が終結すると戦犯追及の手を逃れるためにタイの僧侶に変装して納骨堂に潜伏していたというのだ。

 納骨堂に潜伏したあとは、中国などを経由して日本でも逃亡生活を送った。それほど広いスペースではないが、ここで辻が潜伏生活をしていたというのが感慨深い。

 堂守の水木さんは、「私も開教留学僧としてこちらに来ているので、皆様にこのような場所があるということを伝えていきたいと思います。いつでも足を運んで頂ければ幸いです」と日本人が来ることを歓迎してくれている。

 バンコクの喧騒を離れて、異国に眠ることを選んだ日本人の思いに触れてみるのも一興だろう。

(取材・文/丸山ゴンザレス)

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