「後輩芸人のギャグを平気でパクる」というのは本来ならお笑い界でもタブーとされている。だが、それを逆手に取ってあえて堂々と真似することで評判になっている人もいる。それは、「ザキヤマ&フジモン」ことアンタッチャブル山崎弘也とFUJIWARA藤本敏史。この2人は、気に入ったギャグがあるとすぐに真似をして、自分のものにしてしまう。
『アメトーーク!』では、彼らが後輩芸人のギャグをパクり続ける「ザキヤマ&フジモンがパクリたい-1グランプリ」という企画まで行われ、ここでパクリのターゲットになったクマムシとピスタチオは、これをきっかけに飛躍的にブレーク。いまや、2人に真似をされた芸人のほうが彼らに「パクってくれてありがとうございます」とお礼を言うぐらいの関係になっている。
パクリ芸の域を超えた完コピ芸
そんな中で、意外なところから彼らの後継者とも言える「パクリ芸」の使い手が現れて、話題になっている。それはオリエンタルラジオ。1月26日に東京・ヨシモト∞ホールで開かれた『日本女子博覧会 JAPAN GIRLS EXPO 2015 春 概要発表会見』にて、オリラジは人気絶頂の8.6秒バズーカーを含む芸人数組と舞台に登場。
そして、「武勇伝」を持ちネタとする自分たちが、8.6秒バズーカーに「新旧リズムネタ対決」を挑みたいと話を持ちかけた。中田敦彦と藤森慎吾はあらかじめ用意したサングラスをかけて、全力で8.6秒バズーカーの人気ネタ「ラッスンゴレライ」を完全コピー。藤森がチャラ男キャラを生かして「ちょっと待ってちょっと待ってお兄さん」と歌ってみせる姿は、本家にも負けていないほどだった。
2月21日に大阪・インテックス大阪で開催された『日本女子博覧会』本番では、2組が一緒に舞台に上がり、「ラッスンゴレライ」を同時に披露。動きも間合いも完璧で、もはやパクリ芸の域を超えた完コピ芸になっていた。
これをきっかけに世間ではオリラジを再評価する声が高まっている。実際、オリラジはデビュー直後に「武勇伝」というリズミカルなネタを引っさげて爆発的にブレークしたという点で、現在の8.6秒バズーカーとちょうど似たような経歴を持つ。ラッスンゴレライと武勇伝はネタとして共通する部分もあり、オリラジの2人は過去の自分たちを見ているようで親しみを感じていたのかもしれない。
芸歴10年目での原点回帰
そして最近、オリラジというコンビの中でも、改めて武勇伝の価値が見直されている。2月22日放送の『笑点』ではオリラジが出演。ここでも武勇伝を披露した。しかも昔とは違う新バージョン。ネタの中身も変わっているし、後半には3人のダンサーが出てきて、歌って踊って決めポーズを作る。潔さすら感じられるほどやりたい放題のネタだった。
オリラジはここ数年、『爆笑問題の検索ちゃん 芸人ちゃんネタ祭り』という年末特番で新ネタを披露している。2013年にはダンスと音楽を大胆に取り入れた「カリスマ」というネタで共演者と視聴者に大きな衝撃を与えた。そして2014年には、バックダンサーまで従えた「新型武勇伝」を披露。彼らは芸歴10年目の今まさに「リズム&ダンス」という自分たちの原点に回帰しつつあるのだ。
見た目にも華があるし、中田には嫌みなほどキザなインテリキャラがあり、藤森には「君、かわうぃーね!」で知られるチャラ男キャラがある。テレビでも通用するそれだけの豊富な武器を持ちながら、なおも貪欲に自分たちの型を探し続け、新しいものをすぐに取り入れ、時には後輩のネタまで全力でコピーして、進化し続けるオリラジ。本当の武勇伝とは、彼らが歩み続ける芸人人生そのものなのかもしれない。
- ラリー遠田
- 東京大学文学部卒業。編集・ライター、お笑い評論家として多方面で活動。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務める。主な著書に『バカだと思われないための文章術』(学研)、『この芸人を見よ!1・2』(サイゾー)、『M-1戦国史』(メディアファクトリー新書)がある