都構想どころじゃない!? 大阪市Visaプリペイド支給に群がる生活保護ビジネス業者

生活保護は大阪市の最重要課題だ

 大阪市は2014年12月、家計や金銭支出管理の支援目的として生活保護受給者にVisaプリペイドカードによる生活保護費の一部3万円の受給をモデル的に実施すると発表した。2月には希望者を募り、約2000世帯を対象とし、4月から約1年半の試験運用を経て本格稼動する運びだった。

 だが2月に、このVisaプリペイドカードの発行を希望する生活保護受給世帯を大阪市が募ったところ、その数は「わずか5世帯だった」(大阪市関係者)という。大阪市側が想定していた2000世帯には遠く及ばず、これでは将来的にVisaプリペイドカード支給による生活保護費受給は到底普及しないのではないかと関係者ならずとも不安が襲う。

全部プリペイドにすればカード会社は年間10億円収入

 さて、こうした状況について大阪市役所の課長代理(40代)はこう語る。

「生活保護受給者側に立って考えると嫌でしょうね。ただでさえ生活保護受給者は誰かから管理されることを嫌う。Visaプリペイドカードを用いると、『何にいくら使ったのか』が大阪市側に把握されると考える。実際にはそういったことまでは大阪市側は管理できないはずなのですが……」

 ではいったい何のために大阪市は生活保護受給費をVisaプリペイドカードで支給しようとしているのだろうか。

「すでに週刊誌でも報じられている通り、大阪市による“貧困ビジネス利権”でしょう。大阪市では現金で生活保護受給者に渡す生活扶助費は約1000億円です。これが将来的に全額Visaプリペイドカードで運用するとなると、当然、決済手数料がカード発行元に入ります。その手数料額は約1%といわれています。年間約1000億円を全額カードで運用するとなると発行元である三井住友カードには単純計算で約10億円の収入となるのです。また、モデル事業の概要にはNTT総研や富士通総研の名も出てきますが、生活保護受給世帯の消費活動のビッグデータの売買も視野に入っているのではないか。こっちの利権も莫大なものになる」(前出の課長代理)

カードごと1~2割引で買い取る?

 生活保護受給畑が長いというこの課長代理が恐れるのは、金銭支出管理が苦手な生活保護受給者がこのVisaプリペイドカードの“現金化”だ。

「Visaプリペイドカードの生活保護受給では月3万円、1日上限2000円となっています。こうした制約を嫌う生活保護受給者が、3万円の1~2割引きくらいの額でVisaプリペイドカードごと売り払って“現金化”することは十分に考えられます。西成など貧困ビジネスが盛んな町ではすでにそうしたスキームを考えている連中もいます」(同)

 実際、生活保護受給費をVisaプリペイドカードで使用する場合、利用者側の不便も指摘されている。普段、彼らが利用する商店ではカード使用ができない、1日の上限額が2000円と決まっているので食料品の纏め買いができないといったそれだ。

「こうした利用者側の不便につけこんで、貧困ビジネスを行なおうとする者がカードの現金化スキームを提供したとなると生活保護受給者にとってその支給額は実質目減りすることになりかねません。そこが大阪市生活保護行政の現場ではもっとも懸念するところです」(同)

西成ではすでに“現金化”業者の確保へ

 事実、大阪市西成区で、路上生活者を集め生活保護受給申請をさせ不動産業者にアパートを仲介するその手数料を稼ぐ貧困ビジネス業者は今回の動きを歓迎だとし、次のように語った。

「Visaプリペイドカードの導入で、これを買い上げる業者との交渉を行なっている。大阪市で貧困利権がまた拡大したと理解している」

 この大阪市による生活保護受給費のVisaプリペイドカードでの支給、はたして得をするのは誰なのか。橋下徹大阪市長とカード会社などの企業の関係に注視する維新以外の市議会各政党、市役所職員は少なくない。

(取材・文・写真/川村洋)

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